腎臓を全摘せずに、部分切除をしたいが可能か?
腎がんと診断されました。右腎の腎門部に3センチの腫瘍があり、転移はありません。T1a期とのことです。腎臓を摘出しないで部分切除する方法があるそうですが、私の場合も可能でしょうか。部分切除のメリット・デメリットを、教えてください。
(島根県 男性 50歳)
A 場合によっては可能。主治医に相談を
数年前の研究で、腎がんの部分切除術と全摘除術の結果を比較した報告があります。それによると、がんのコントロールは変わらないが、全生存率でみると部分切除のほうがよいという結果が出ています。それを受け、可能な症例については、腎機能を温存できる部分切除が推奨されるという考え方が広まっていました。
ところが昨年、全生存率でいうと逆に部分切除のほうが少し悪いという結果が、欧州で行われた比較試験で出されました。現在、議論が少々混乱しているところでもあります。ただ、がんのコントロールについては、部分切除のほうが明らかに劣るという結果は出ていないため、一般的に腎機能を残せるのなら残したほうがいいという方針に大きな変更はないと考えていいでしょう。
腎部分切除ができるのは、リンパ節転移や遠隔転移がなく、がんの大きさが4センチ以内という、T1a期のがんです。さらに、がんのできている場所やでき方が、部分摘除に適している必要があります。
具体的には、がんが腎臓の外側にできている外方突出型であるほうが望ましく、腎盂や腎動脈、腎静脈から十分な距離が保たれ、切除によってこれらを損傷するリスクが高くないなどの条件があげられます。
ご相談者の方の腎門部というのは、腎盂や腎動静脈に近い部位なので、残念ながらあまり部分切除術に適しているとはいえません。ですが、部分切除ができると判断される場合もあるので、主治医に相談してみるとよいでしょう。
腎部分切除のデメリットとしては、全摘除術に比べると手術が難しいという点があります。術後の出血や尿の漏出など、合併症の確率は高まります。
また、術中は腎動脈と腎静脈の血流を止めて手術することもあります。その時間が長いと、術後の腎機能が損傷される可能性も出てきます。
全摘除術は、腹腔鏡下で行う施設も多くありますが、部分切除は、多くが開腹で行われ、腹腔鏡下での部分切除術を行っている施設は少ないのが現状です。