肝動注化学塞栓療法が効かなかった場合、次の治療は?

回答者:森安 史典
東京医科大学 消化器内科主任教授
発行:2012年12月
更新:2014年1月

  

2012_12_19_01

4cmの進行肝がんで、骨転移があります。1カ月前に肝動注化学塞栓療法を受けましたが、あまり治療効果がありませんでした。もう1度化学塞栓療法を行っても、あまり効果が期待できないと医師から言われており、がっかりしています。次の治療法として、ネクサバールという薬での治療もあると勧められましたが、どちらがよいでしょうか。副作用の点なども含めて教えてください。

(神奈川県 女性 55歳)

A ネクサバールによる全身治療を

1度目の肝動注化学塞栓療法で効果がなかったわけですから、肝動注化学塞栓療法で再治療するより、ネクサバールでの治療を行うほうがいい選択だと思います。

ネクサバールは、2009年に切除不能な進行肝がんの治療に承認された分子標的薬です。全身のがんの進行を抑えることで、生存期間を延ばす効果があります。

また、骨に転移したがんの進行や再発を抑える効果も期待できます。とくにこの方の場合は、骨に転移があるとのことですから、ネクサバールによる全身治療がよいでしょう。

ただし残念ながら、ネクサバールの肝がんに対する治療効果はさほど強くありません。

具体的に奏効率(がんの進行を抑える効果)でいうと、腫瘍が2分の1以上縮小、または消失した状態が6カ月以上維持できる人(PR率、CR率)は、10%程度です。さらに20%の人でがんの成長が抑えられますが、残りの70%の人にはほとんど効果がありません。

ネクサバールの治療で効果が現れなかった場合は、肝臓に対しては肝動注化学塞栓療法を行い、骨の転移には放射線療法を行うという方法もあります。肝動注療法には、効果が期待できそうなほかの薬剤に変更して化学塞栓療法を行うといいでしょう。

ネクサバールの副作用は、下痢、手足症候群という手足の皮膚症状、高血圧などです。下痢や高血圧は、薬でコントロールできれば服薬は続けられます。 また、手足症候群は、ローションやステロイド軟膏で症状をやわらげます。まれにみる重篤な副作用には、間質性肺炎があるため、発熱や空咳などの症状に気づいたら早く主治医に連絡するという対処が必要です。治療は、1日2回、飲み薬の内服で行えます。

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