大きな腫瘍でもラジオ波治療は可能か
C型肝炎ウイルスによる肝細胞がんとわかりました。腫瘍の大きさ5センチほどが1個、2センチが1個、合計2個とのことです。担当医から切除を勧められています。できれば、手術は避けたいと思っています。知人からラジオ波焼灼術があると聞きましたが、私のような腫瘍の大きさでも、ラジオ波焼灼術は可能なのでしょうか。また、ラジオ波焼灼術と手術との治療成績についても教えてください。
(岩手県 67歳 女性)
A 肝動脈塞栓術をまず実施し、その後にラジオ波焼灼術を
治療方針は、5センチと2センチの2個の病変の位置関係と肝機能によって決まります。肝臓は8つの区域に分かれています。2個の病変が同じ区域内で、肝機能に余裕のある場合なら、手術で切除をしてもよいと思います。ただし、たとえば、2個の病変が肝臓の左葉と右葉というように別の区域にできていた場合には、手術が必ずしもよいとは限りません。手術をしても再発する頻度が極めて高いからです。
現在、手術を受ける方の3分の2では病変は1個しかありません。病変が2個ある場合には、技術的に切除が可能でも必ずしも手術が選択されているわけではありません。担当医から切除を勧められたとのことですから肝機能は比較的よいのだと思いますが、肝硬変が進んだ状態なら手術して肝機能が低下すれば、がんの治療としては良くても長期生存はできなくなります。ラジオ波焼灼術では腫瘍の大きさが3センチまでが一般的な適応です。5センチの腫瘍でも経験の豊富な施設では焼灼できると思いますが、かなりの技術を必要とします。
ラジオ波焼灼術の機器も何種類かありますが、日本で一番使われているのはクールチップRFシステムを用いる機械です。腫瘍の大きさが5センチなら、非絶縁部の長さが3センチの電極を少なくとも4カ所に挿入して焼灼します。腫瘍全体を焼灼できたと考えれば、CTを撮りますが、その結果、腫瘍の残存が否定できない部分があれば追加焼灼を行います。5センチの腫瘍でも原則的には1セションの焼灼で終わるよう努力しますが、実際には1セッションの治療で腫瘍全体が十分焼灼できていると評価CTで言える確率は50パーセント未満でしょう。
5センチと2センチの2個の病変がある場合は、肝動脈塞栓術をまず実施し、その後にラジオ波焼灼術を行ったほうがよいと思います。肝動脈塞栓術は、その治療効果のほかに、治療後のCT検査で腫瘍の輪郭を正確に評価できるというメリットがあります。ご相談者の腫瘍が本当に5センチと2センチの2個だけなのか、3つ目、4つ目の腫瘍がないのかどうかもわかります。そのためにも、肝動脈塞栓術を行ったほうがよいと思います。
なお、5センチと2センチの2個の腫瘍がある場合に、肝動脈塞栓術だけという施設も多いと思いますが、肝動脈塞栓術だけでは根治性が低いため、ラジオ波焼灼術もしくは手術による追加治療をしたほうが長期生存できる可能性が大きくなると思われます。なお、ラジオ波焼灼術と手術とを比較した臨床試験はありません。