肝細胞がんの切除後の補助化学療法は?

回答者:池田 公史
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2007年11月
更新:2013年11月

  

最近、C型肝炎ウイルスによる肝細胞がんとわかりました。腫瘍の大きさは2センチほどで1個とのことです。手術が可能とのことなので、手術を受けるつもりです。肝細胞がんは再発しやすいといわれています。手術後は、インターフェロン療法や、養子免疫療法などがあると聞いています。どんな術後補助療法を受けたらよいのでしょうか。また、その治療成績についても教えてください。

(青森県 男性 55歳)

A インターフェロン療法やレチノイド療法などがある

ご指摘のように肝細胞がんは再発率の高いがんです。その肝細胞がんの切除後の補助化学療法はいろいろ取り組まれていますが、現在のところ、標準的な治療は確立されていません。しかし、期待される治療法としては、インターフェロン療法やレチノイド療法などがあります。

インターフェロン療法は、肝細胞がんの術後補助療法として施行した患者さんと施行しなかった患者さんを比較した臨床試験において、インターフェロンを施行した患者さんの再発率が有意に低下したとの報告があり、再発予防の補助療法として有用であるといわれています。

このインターフェロン療法は、がんに対する直接的な効果というより、C型肝炎におかされた肝臓自体を治すことで、次に発生する肝細胞がんを抑えるのではないかと考えられています。ただし、インターフェロン療法は、誰でも行えるわけではなく、赤血球や白血球、血小板という骨髄機能や肝機能障害の程度なども考慮する必要がありますので、治療が可能かどうかは担当医とよくご相談なさってください。

レチノイドは、ビタミンAの類似化合物で、内服薬です。簡便であり、インターフェロン療法のように骨髄機能や肝機能による制限が少ないのが特徴です。これまでに肝細胞がんの再発予防に有用であったという報告があり、現在、その有用性を確認するための臨床試験が行われている段階です。したがって、まだ市販されておらず、残念ながら使用するのが困難な状況です。

また、養子免疫療法では、術後補助療法として施行したところ、肝細胞がんの再発率を有意に低下させたとの報告があります。しかし、全体の生存期間においては、有意な差が得られておらず、金銭的な負担も大きいため、あまり行われていないのが現状です。

海外では放射線性の薬剤を切除後に肝臓に肝動脈から投与したところ、再発率を低下させたとの報告もありますが、国内では使用できません。

その他、表で示した抗がん剤による治療も行われることがありますが、有用であったとの報告はなく、術後の補助療法としての化学療法はあまり行われていません。

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