生体肝移植について詳しく教えて欲しい

回答者:椎名 秀一朗
東京大学医学部付属病院 消化器内科講師
発行:2005年8月
更新:2013年10月

  

4年前に肝臓がんで手術を受けました。それから再発を繰り返し、今までに3回、エタノール注入療法やラジオ波療法で治療を受けています。C型肝炎が原因だということで、おそらくこれからもがんが発生するだろうと言われています。いたちごっこで、疲れてしまいました。そこで、最近健康保険の適用となった生体肝移植を受けたいと考え、大学病院などのホームページを調べてみましたが、よくわかりません。生体肝移植の適応条件や費用などを教えてください。

(愛知県 59歳 男性)

A 適応条件はミラノ基準に準拠するが、詳細は施設によってまちまち

生体肝移植は、ミラノ基準(前述)に入っていれば、健康保険の適用となります。ただし、この基準を超えた場合でも、各病院でさまざまな条件をつけて生体肝移植を行っています。例えば、東大病院では「5センチ以下5個以内」なら健康保険外での生体肝移植を検討します。健康保険外の場合、自費で1000万円から2000万円の費用がかかります。なお、対象となる年齢も各病院によってさまざまです。東大病院では65歳未満が原則ですが、病院によっては60歳代後半でも行っています。また、生体肝移植ではドナーが必要です。ドナーは、一般的には3親等以内の親族で健康な肝臓を持っている65歳以下の人に限られます。肝移植を受ける患者さんとドナーとは血液型が同じか適合すること(輸血が可能な組み合わせ)が原則です。病院によっては、3親等以外でも倫理委員会で検討して許可する場合もあります。

これまで、再発を繰り返しているとのことですが、初発で3センチ以下のがんが3個の場合と、何度も再発を繰り返して現在の状態が3センチ以下3個の場合とでは、やはり再発を繰り返してきた場合のほうが移植後に再発する可能性が高くなり、治療成績が多少悪くなります。

また、C型肝炎による肝臓がんの場合、肝移植後、ペグインターフェロンと抗ウイルス剤の飲み薬・リバビリンとの併用療法を行う必要があります。この治療を行わなかった場合、かなりの確率で急速に病気が進行します。そこで、最近では生体肝移植をしないで、ペグインターフェロンとリバビリンでC型肝炎ウイルスを駆除して、再発したらラジオ波療法を行うという組み合わせの治療も行います。ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法でC型肝炎ウイルスを以前よりもずっと高い確率で駆除できます。この併用療法は、昨年、健康保険適用となりました。患者さんの医療費負担が軽くなり、かなりの効果が期待できます。検討してみてください。

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