黄疸・腹水・発熱などの症状。今後の治療選択は?

回答者:椎名 秀一朗
東京大学医学部付属病院 消化器内科講師
発行:2005年8月
更新:2013年10月

  

2005年初めに検査で肝臓がんが見つかり、2カ月前まで入院していました。「かなり進行していて、肝硬変も併発しているため、手術はできない」と言われ、入院中は点滴と注射のみで、何もしないような状態でした。退院後、自宅で療養していましたが、最近、黄疸がひどくなり、腹水もたまり、発熱(38度前後)を繰り返すようになったため、再入院しました。担当医は「もうすることがない」と言います。私のような状態では治療法はないのでしょうか。肝動注などの治療は難しいのでしょうか。

(山梨県 62歳 男性)

A 進行度により生体肝移植、化学療法などの選択肢がある

肝臓がんの進行度はどの程度なのでしょうか。肝臓がんの進行度と肝機能の状態によって、治療法は異なってきます。肝臓がんはあまり進行していないのに、肝硬変による肝機能低下のために、肝臓がんの治療ができない可能性もあります。こうした場合、肝移植が適応になります。日本国内では生体肝移植がほとんどです。生体肝移植ではドナー(臓器提供者)が必要となります。また、肝移植にはミラノ基準と呼ばれる一定の条件(がんが単発で5センチ以下、あるいは3センチ以下3個以内で、遠隔転移・リンパ節転移がなく、門脈や肝静脈にも浸潤がない)がよいとされ、この条件内での肝移植には医療保険が適応されます。62歳という年齢から考えても、肝移植は治療法の1つと言えます。

肝臓がん自体はかなり進行していて門脈腫瘍栓があるような場合でも、肝機能がそれほど悪化していない場合には5-FU(一般名フルオロウラシル)とペグインターフェロン(体内でゆっくり作用させるように改良した新しいインターフェロン)の併用療法の適応がないかどうか検討する必要があります。ペグインターフェロンには5-FUの抗がん作用を強化する作用のあることがわかってきました。そこで、最近ではこの併用療法を行うようになりました。皮下にリザーバーと呼ばれる小さな袋のような金属器具を埋め込んで、そのリザーバーに携帯用のポンプを用いて5-FUを持続的に注入します。ペグインターフェロンは週1回注射をします。この併用療法は、半分ほどの患者さんに延命効果がありそうです。そのため、最近では肝機能がかなり悪化した場合にも、この併用療法を行うようになりました。この併用療法も選択肢の1つになると思います。

門脈腫瘍栓=腫瘍が肝臓の栄養血管(門脈)を詰まらせた症状

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