黄疸・腹水・発熱などの症状。今後の治療選択は?
2005年初めに検査で肝臓がんが見つかり、2カ月前まで入院していました。「かなり進行していて、肝硬変も併発しているため、手術はできない」と言われ、入院中は点滴と注射のみで、何もしないような状態でした。退院後、自宅で療養していましたが、最近、黄疸がひどくなり、腹水もたまり、発熱(38度前後)を繰り返すようになったため、再入院しました。担当医は「もうすることがない」と言います。私のような状態では治療法はないのでしょうか。肝動注などの治療は難しいのでしょうか。
(山梨県 62歳 男性)
A 進行度により生体肝移植、化学療法などの選択肢がある
肝臓がんの進行度はどの程度なのでしょうか。肝臓がんの進行度と肝機能の状態によって、治療法は異なってきます。肝臓がんはあまり進行していないのに、肝硬変による肝機能低下のために、肝臓がんの治療ができない可能性もあります。こうした場合、肝移植が適応になります。日本国内では生体肝移植がほとんどです。生体肝移植ではドナー(臓器提供者)が必要となります。また、肝移植にはミラノ基準と呼ばれる一定の条件(がんが単発で5センチ以下、あるいは3センチ以下3個以内で、遠隔転移・リンパ節転移がなく、門脈や肝静脈にも浸潤がない)がよいとされ、この条件内での肝移植には医療保険が適応されます。62歳という年齢から考えても、肝移植は治療法の1つと言えます。
肝臓がん自体はかなり進行していて門脈腫瘍栓*があるような場合でも、肝機能がそれほど悪化していない場合には5-FU(一般名フルオロウラシル)とペグインターフェロン(体内でゆっくり作用させるように改良した新しいインターフェロン)の併用療法の適応がないかどうか検討する必要があります。ペグインターフェロンには5-FUの抗がん作用を強化する作用のあることがわかってきました。そこで、最近ではこの併用療法を行うようになりました。皮下にリザーバーと呼ばれる小さな袋のような金属器具を埋め込んで、そのリザーバーに携帯用のポンプを用いて5-FUを持続的に注入します。ペグインターフェロンは週1回注射をします。この併用療法は、半分ほどの患者さんに延命効果がありそうです。そのため、最近では肝機能がかなり悪化した場合にも、この併用療法を行うようになりました。この併用療法も選択肢の1つになると思います。
*門脈腫瘍栓=腫瘍が肝臓の栄養血管(門脈)を詰まらせた症状