肝動脈塞栓術を勧められているが、肝不全が心配。ほかに治療法は?
71歳になる父についての相談です。C型肝炎から肝硬変になり、先日の検査で肝臓がんと診断されました。左葉に2~3センチのがんが2個あるそうです。また、腹水がたまったので、入院してその腹水を抜きましたが、再びたまり始めています。これはがん性のものではなく、肝硬変によるものと言われました。腹水があるためか、切除手術を行うことは難しいらしく、治療法としては主治医から肝動脈塞栓術を提案されていますが、術後に肝不全になる可能性があるとも言われました。現在はそれほどつらい症状が出ている様子はないため、リスクのある治療はなるべく避けたいと思っています。父の場合、ラジオ波焼灼療法やエタノール注入療法など、ほかの治療法は適応にならないのでしょうか。
(神奈川県 41歳 女性)
A 肝動脈塞栓術が一般的。ラジオ波焼灼療法などが適応になることも
腹水がたまり、肝機能が落ちていることなどを考えると、確かに肝切除術(切除手術)は勧められません。
また、肝臓を移植する肝移植術は、71歳という年齢を考えると、難しいでしょう。
肝移植術は高齢では難しく、東大病院の場合は、原則として64歳以下を対象にしています。医療施設によっては、70歳くらいまで対象にしていますが、71歳となると、ほとんどの施設で対象外になるでしょう。
ラジオ波焼灼療法とエタノール注入療法は、腹水が存在する状態では、出血などの合併症を起こす可能性が高くなります。
利尿剤やアルブミン製剤を投与して、腹水が少なくとも穿刺経路(電極や注入針が挿入されていく皮膚から病変までの道すじ)になくなれば、ラジオ波焼灼療法やエタノール注入療法も選択肢に入れられます。そうでない場合は、これらの治療法はおすすめできません。
以上のことを考えると、最も勧められる治療法は、一般的には主治医の提案どおり、肝動脈塞栓術です。
肝不全を心配されていますが、必ずしも起こるわけではありません。カテーテルを栄養動脈に選択的に挿入し塞栓範囲を縮小できれば、肝不全が起こる可能性は低くなります。