B型肝炎から肝臓がんに。手術はできないと言われたが
64歳の父がB型肝炎が原因の肝臓がんと診断されました。肝臓の左側に3~6センチのがんが4個あり、門脈への浸潤もあるということです。腹水や黄疸はなく、自覚症状も特にありませんが、主治医には切除手術はできず、今後は抗がん剤による治療を行うと言われています。しかし、肝臓がんは抗がん剤が効きにくいがんだと聞き、不安です。父のような場合、手術は難しいのでしょうか。また、ほかによい治療法はありませんか。
(東京都 36歳 男性)
A 動注化学療法と抗ウイルス薬を併用するのが最も一般的
肝臓の左側だけにがんがあるのでしたら、医療施設によっては、切除手術を行うこともあるかもしれません。ただ、ご相談者のお父様の場合、がんがある程度進行しているので、手術で切除したとしても、再発する確率が高いのが現状です。
この場合の治療法は、動注化学療法が一般的です。動注化学療法とは、右の太もものつけねや左の鎖骨下などにポートという器具を皮下に埋めて、肝動脈に挿入したカテーテルと結合させ、肝動脈に抗がん剤を流し込む抗がん剤治療です。
動注化学療法は具体的には、主に次の2つのメニューがあります。1つは5-FU(一般名フルオロウラシル)とインターフェロンの2剤を併用する「インターフェロン併用5-FU動注化学療法」、もう1つは5-FUとランダもしくはブリプラチン(一般名はいずれもシスプラチン)の2剤を併用する「ロードーズFP」という治療法です。
前記いずれの治療法でも、がんが根治する可能性は約20パーセント、がんが縮小する確率は20数パーセントです。つまり、一般的に動注化学療法が功を奏する可能性は40数パーセントほどあると言えます。
なお、注意しなくてはいけないのは、この患者さんの場合、化学療法を行なうとB型肝炎のウイルスが活性化して肝不全になる可能性があることです。このため、動注化学療法と併用して、ゼフィックスというウイルスを抑える薬を服用する必要があります。
ほかの治療法では、門脈の浸潤の範囲によっては、肝動脈塞栓術も考えられます。がんが門脈の分枝にとどまっている状態なら治療ができる可能性がありますが、門脈の本幹まで及んでいる状態で肝動脈塞栓術を行うと、肝不全を起こしてしまいます。
ラジオ波焼灼療法とエタノール注入療法は、門脈腫瘍栓(腫瘍が肝臓の門脈=栄養血管を詰まらせること)を完全に治すことは困難なため、この患者さんにはおすすめできません。ただし、いずれかを動注化学療法と併用する方法はあります。
肝移植は、門脈への浸潤がある場合は原則として禁忌です。