C型肝炎。肝がん発症の遺伝子検査を受けたい

回答者:森安 史典
東京医科大学 消化器内科教授
発行:2011年12月
更新:2013年10月

  

昭和42年に手術を受けたときの輸血が原因で、C型肝炎を発症しました。現在、肝臓の数値などはAST29、ALT24、PLT21.8万などです。先日、「理化学研究所がC型慢性肝炎に起因する肝がん発症に深く関わる遺伝子を発見」というニュースを聞きました。DEPDC5遺伝子型をもっていることで、肝がんの発症リスクが約2倍に高まるとのことですが、今後、子供の受験を控えているので、治療が本当に必要なのかどうか知りたいです。またもし治療が必要なのであれば、治療時期を先送りするなどの対策を考えたいと思い、この遺伝子型を是非調べたいと思っています。この検査はどこで、どのような方法で調べられるのでしょうか。また、費用はいくらくらいかかるのでしょうか。

(青森県 女性 46歳)

A 遺伝子検査は一般的でない。C型肝炎の早期治療を

肝がんを発症しやすい遺伝子というのがいくつかわかっていますが、どれもまだ研究段階です。大腸がんや乳がんのように、患者さんの発がんリスクが高いかどうかを検査できるまでには至っていません。

このDEPDC5遺伝子型についても、その研究や検査は一部の施設でしか行われていないと思います。費用等を含め、詳しくお知りになりたい場合は、理化学研究所のほうに問い合わせてみるといいでしょう。

もしこのDEPDC5遺伝子型であったとしたら、〝早く治療をしよう〟とお思いになるかもしれませんが、遺伝子検査で発がんリスクが高いことがわかったとしても、それは100パーセントではありません。肝がんの発がんに対して重要なことは、遺伝子型に関わらず、C型肝炎をしっかり治療することです。

C型肝炎から肝がんになるまでには、C型肝炎から肝硬変に近い慢性肝炎、肝硬変を経て肝がんを発症します。肝硬変から肝がんを発症する人は年間7~8パーセントいらっしゃいます。さらに1度肝がんを発症すると、たとえ手術などの治療でがんを取り除いても2つめのがんができやすく、1年間で25~30パーセントの患者さんに新たながんができます。

このように、肝硬変になってしまうとどんどん発がん率が高くなってしまいます。したがって重要なことは、C型肝炎から肝硬変への進行を防ぐことで、それが肝がんの発がんを防ぐことにつながるのです。ですからC型肝炎ウイルスを持っている方は、まずはC型肝炎のウイルスに対する治療をすることが非常に重要となります。治療によって、C型肝炎ウイルスを体から排除することで、肝がんを発症する可能性はほとんどなくなります。

ご相談者の場合は、肝機能、それから血小板も正常値で、肝炎は活動性ではなく、肝硬変にもなっていない状態ですので、数年以内に肝がんができる可能性は極めて低いと言えます。

お子様の受験などがあり、治療を先送りにしたいお気持ちもわかります。定期的に血液検査を行ったり、肝機能を調べながら様子をみることで、治療まで2~5年くらいは待てるかもしれません。ですが、46歳ということでまだ若いこと、また〝肝炎がいつ活動性になるか〟と心配を抱き続けるよりは、時期をみて早めに治療をすることも是非考慮に入れてください。

C型肝炎の治療では、インターフェロンを用いた薬物療法を行います。これによって、発がんの時期を遅らせたり、発がんの可能性を低くしたりします。インターフェロンの治療は経口薬を毎日服用し、週に1度の注射を24~48週間行います。副作用もありますが、忙しい仕事をしながら治療を続けている方も少なくありません。

ご相談者のように、現在肝炎ウイルスが活動していないときに治療する場合と、活動しているときに治療する場合では、ウイルスの排除率は変わりません。しかし肝炎が進むにつれ、ウイルスの排除率は悪くなり、肝臓の働きも悪くなり、また血小板も減っていきます。さらにインターフェロンの治療でも血小板が減ってしまうので、十分な量を使えなくなる場合があります。副作用も強く出やすいので、治療の完遂率が下がり、インターフェロンの有効性が得にくくなるのです。

したがって、治療はなるべく若いうちにするほうが体には比較的楽であることが言えます。

また、女性の場合、閉経後は肝炎が進行し肝硬変になりやすく、肝硬変から肝がんを発症しやすいことがわかっています。肝硬変になるとインターフェロンも効きにくくなるとされています。ですので、なおさら若いときに治療を行うことが勧められます。

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