多発肝がんに重粒子線治療は適応か?
肝臓に4センチが1つ、2センチが2つ、1センチが1つと、4カ所のがんを多発しています。もともとC型肝炎で、肝機能が良くないために手術は難しいといわれています。重粒子線治療は受けられますか。
(岡山県 女性 68歳)
A 肝動脈塞栓療法を考慮したい
肝臓にがんが4つあるとのことですが、4つがある程度近い領域にまとまっていれば重粒子線治療が可能かもしれません。ただこういったケースは、あまり一般的ではありません。
ちらばっているがんをすべて重粒子線治療だけで治療することは得策ではないかもしれません。4つのがんを重粒子線で治療した結果、肝臓全体に重粒子線が当たってしまうなら、重粒子線治療のメリットは少ないです。
ご相談者のような場合、重粒子線治療はできないわけではありませんが、通常、がんが複数ある場合は肝動脈塞栓療法を選択する可能性が高いと思いますので、考慮に入れてもいいと思います。
また、1センチ、2センチなどの小さながんにはラジオ波焼灼療法も有効な手段となるので、小さいものをラジオ波焼灼療法で治療し、4センチの大きながんに重粒子線治療を行う、という方法は考えられます。
肝細胞がんは、肝硬変などの慢性肝障害を発生母地として発症します。1つのがんを治療しても、肝臓の他の部位から新しいがんが出現してくることを考慮する必要があります。
また、がんだけではなく肝機能も生命予後を規定する要因の1つとなります。肝機能があまりに低い場合はがんに対する治療よりも低肝機能に対する治療が優先されることもあります。
重粒子線治療は放射線を局所に集中できますが、重粒子線の通り道には放射線のダメージが少なからずあります。腫瘍のサイズ、部位によって多くの正常肝細胞が照射されれば、照射による肝機能低下も考慮しなくてはなりません。一般に重粒子線治療により肝機能が低下することはあまりありませんが、もともとの肝機能が悪く、予備力があまりない場合には、それ自体で肝機能が悪化する可能性はあります。肝機能が著しく悪い場合には、重粒子線治療の適応にはなりません。
具体的には、肝機能を表す評価である、チャイルドA、Bの患者さんが重粒子線治療の適応となります。肝臓がんの治療は、2回の短期照射ですみます。入院は必要です。