肝がん治療後の食生活で気をつけるべきことは?

回答者:森安 史典
東京医科大学 消化器内科教授
発行:2012年2月
更新:2013年10月

  

2期の肝がんがわかり、手術をしました。長年、肝機能があまり良くなく、そのような場合肝がんを再発しやすいと聞き、心配です。治療後の生活で、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。食生活や飲酒などについて、アドバイスをいただきたいです。

(埼玉県 男性 69歳)

A 飲酒や糖、タンパク質の摂取に注意

ご相談者は、肝機能が良くないということですが、肝機能の悪化が進み、肝硬変になると、肝臓全体ががんのできやすい状態になり、治療の後に、1年間で25~30パーセントの方に肝がんが再発します。ですから、肝硬変にならないように、肝臓に負担をかけず、肝機能を維持する食事を含めた適切な生活を送ることが重要です。

まず、肝機能が良くない場合、飲酒は止めましょう。アルコールのほとんどは、肝臓で代謝されます。肝機能が良くないと、代謝がうまくいかず、アルコールの血中濃度が高いままになってしまい、脳や心臓、呼吸器のみならず、肝臓そのものに悪影響を及ぼします。

食生活では、適正なカロリーと栄養のバランスを考えた食事を心がけましょう。とくに、糖質とタンパク質については注意が必要です。

糖質は摂取する腸で吸収されて血糖値が上昇します。血糖値が上昇すると、膵臓から分泌されるインスリンによって、糖は肝臓の細胞に取り込まれてグリコーゲンとして蓄積されます。

血糖が下がったら、肝臓で貯めていたグリコーゲンをブドウ糖に分解して再び血中に出します。このようにして、血糖値の調節は行われています。

肝機能が低下している場合、糖質を取り過ぎてしまうと、肝臓での糖の取り込みやブドウ糖への変換がうまく行われず、血糖値が下がりにくくなります。カロリーの摂取は1600~2000キロカロリーの間で留めるようにしてください。

また、タンパク質の摂取にも注意が必要です。たとえば牛肉を食べたら、そのタンパク質を人間のタンパク質として体に取り込むには、1度アミノ酸に分解して、肝臓でヒトアルブミンなどのタンパク質に作り直します。肝臓は、タンパク質の変換工場でもあるのです。

ですから、タンパク質も、肝機能の悪い状態で摂り過ぎてしまうと、うまく処理できずに、タンパク質の代謝産物であるアンモニアが増えてしまいます。アンモニアが体内に増えると肝性脳症を引き起こし、計算力低下、物忘れ、異常行動や認知症に似た症状をきたします。タンパク質の摂取は体重1キロあたり1グラムが目安です。

加えて、肝機能が低下していると、塩分の取り過ぎによってむくみや腹水(お腹に水が貯まる)がひどくなる場合がありますので、塩分は1日8グラム以下を目安にしてください。

日ごろの食生活に気をつけて、肝機能を維持し、なるべく再発しにくい状態をめざすことが大切です。またたとえ再発しても、肝機能が維持できていると治療がしやすくなります。

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