30代の肝がん。その治療法は?

回答者:森安 史典
東京医科大学 消化器内科教授
発行:2012年8月
更新:2013年10月

  

先日、精密検査を受けたところ、3cmの肝がんが見つかりました。見つかったがんは腹腔鏡下の手術で無事摘出できましたが、私はC型肝炎を患っており、肝硬変の症状も見られるため、再発が心配です。術後の治療として、インターフェロンを使っていますが、生体肝移植も考えたほうがいいでしょうか?

(大阪府 男性 38歳)

A 可能であるなら移植を受けるべき

肝がんの特徴として、治療と再発を繰り返していると、5年~6年でがんの悪性度は高くなり、肝臓全体に広がったり、骨や脳へ転移が生じるという問題が生じます。

ですから、C型肝炎を患い、肝がんができてしまった65歳以下の若い世代の患者さんは肝臓の移植を考えるべきでしょう。

ただし、移植治療にもリスクがあるということを十分に理解しなければなりません。移植を受けた患者さんの30%くらいは、拒絶反応や感染症、C型肝炎や肝がんの再発などがおき、5年以内に亡くなります。

ですから目安として、移植後5年間何事もなく過ごせれば無事に成功したと考えられます。

また、肝移植の適応には、ミラノ基準と呼ばれる世界的な基準があります。この基準に則ると、移植の適応となるのは、3cm以内の腫瘍が3つ以内、または単発の腫瘍であれば5cm以内であることが条件となります。

なぜ、このような基準があるのかというと、腫瘍の細胞の数が多いと、がん細胞が血液中に流れており、移植しても新しい肝臓にがんが再発してしまうからです。また移植した後は、拒絶反応を抑えるために免疫力を抑制しなければならないので、血液中にがん細胞が流れていると、移植した肝臓の中で、逆にがんの増殖を招いてしまう危険性もあるのです。

また、移植には2種類の方法があります。1つは3親等までの親族などを通して行う、生体部分肝移植、もう1つは脳死したドナー(提供者)から肝臓の提供を受ける死体肝移植です。世界的にはドナーの肉体的な負担の観点から、死体肝移植が推奨されていますが、日本ではまだ脳死の提供者が少なく、今後の課題となります。

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