繰り返す転移がんに放射線治療はどうか?

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2010年12月
更新:2013年12月

  

6年前に肺腺がん1B期で手術をしました。3年前に再発が判明した際には、すでに両肺に散らばっており、4期と診断されました。再発後はパラプラチン(一般名カルボプラチン)+タキソール(一般名パクリタキセル)、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)+シスプラチン(一般名)、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)、タルセバ(一般名エルロチニブ)などの抗がん剤治療を続けてきましたが、どれもじきに効き目がなくなり、胸椎、腰椎へと転移を繰り返しています。先日、縦隔(後述)にも転移していることがわかりました。主治医はこのまま抗がん剤を使っていく方針ですが、私は定位放射線療法なども試してみたいです。こんな状態での放射線治療は効き目はありませんか。

(広島県 女性 70歳)

A 基本は化学療法。定位放射線療法は期待薄

転移を繰り返しているので、全身にがんが散らばっていると考えられます。このような場合、化学療法が基本治療となります。範囲を狭めて大量の放射線を当てる定位放射線療法のメリットはあまりありません。

しかし、胸椎や腰椎に痛みが出たり、麻痺したりするのを押さえ込むために放射線を当てることには効果が期待できます。また骨転移には、ビスホスホネートをお勧めします。

ビスホスホネートとは骨の代謝を調整する薬で、骨転移の進行や新しい転移の発生も抑えます。全般に転移を経由した肺がんの進行を抑えるのに効果的です。骨転移が進行しにくいのでQOL(生活の質)が高まり楽でいられるし、寿命も延びます。いろいろ種類はありますが、ゾメタ(一般名ゾレドロン酸)が1番代表的で、データも確立されており、副作用もあまりありません。

ただ、顎骨(あごの骨)が腐ってしまう「壊死」という副作用が起こることがあります。歯周病などから細菌が骨に入り込むことが関係しているといわれているので、それを防ぐために歯科的な衛生を保つことが大切です。歯科医によく診てもらってください。

しかし、深刻な副作用としてはそれくらいで、ほかにはあまり問題は起きません。ゾメタだと3~4週間に1回、1回30~40分の点滴で済むので、気楽に使えていい薬だと思います。ただし、腎臓から体外に排出される薬なので、腎臓機能が衰えている方では薬の量の調整が必要です。

縦隔とは、両肺の間の、心臓や食道などが収まっている場所ですが、ご相談者はここのリンパ節に転移したのでしょうね。転移したがんが大きくなると、縦隔の場所によっては空気の通り道が押し潰されるとか、食道などの器官から出血することがあるので、そこに放射線を当てる場合もあります。 しかし、いずれの場合も定位放射線である必要は普通はなく、通常の放射線で十分でしょう。放射線科の先生とよくご相談ください。

ビスホスホネート=破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品。腫瘍の骨転移の予防と治療に用いられる

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート3月 掲載記事更新!