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腫瘍圧迫による声帯の麻痺は?

回答者・岡本浩明
横浜市立市民病院呼吸器内科・腫瘍内科部長兼科長
発行:2013年10月
更新:2019年4月

  

去年の夏にCTで肺がんが発見されました。カルボプラチン、アリムタ、アバスチンなどの投与を受けてきました。治療開始3カ月くらいで声が出なくなり、気管に物が入り、むせるようになりました。がんで左声帯神経が圧迫されて麻痺したことが原因とされ、左声帯の手術を受けました。声帯神経の麻痺は回復の可能性はありますか?がんは小さくなって、転移はないと言われていますが、抗がん薬治療はこのままでいいですか?

(大阪府 男性 75歳)

神経麻痺は残る。誤嚥にも気をつけて

横浜市立市民病院呼吸器内科・
腫瘍内科部長兼科長の岡本浩明さん

声帯麻痺とは、声帯の動きをつかさどる反回神経が麻痺し、声帯が動かなくなる状態です。肺がんの縦隔リンパ節転移もしくは直接浸潤により縦隔内を走行する反回神経が圧迫され麻痺し、声帯が動かなくなります。そのため声がかれ、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。

化学療法中に症状が増悪したなら、その効果は限定的であった可能性があります。反回神経麻痺は、いったん生じると回復は困難ですので、その後の2次化学療法が奏効しても、反回神経麻痺は残存することが大半です。回復の可能性については困難といわざるを得ません。ただし手術を受けていますので、発声機能は部分的に回復していると推測されます。今後、完全に声が出なくなる可能性は低いと思います。

声帯麻痺の患者さんは誤嚥の危険がありますので、少量ずつ時間をかけて食べる必要があります。また、咽頭通過スピードの速い水分が苦手ですので、ゼリー状の食べ物やお粥の類を多く摂ることをお勧めします。

治療継続については、今も1次治療中ならば、部分的にがんは小さくなっても、異なる部位で悪化した病変があれば治療の変更が必要と判断します。2次治療に入っておられ、がんが縮小しているのであれば、反回神経麻痺が残存していても治療続行でよいと思います。

がんは縮小しても全身状態が悪化した場合は治療中止(休止)が妥当です。いずれにせよ、主治医の先生から現在の治療効果と病状について詳しい説明を受けられることをお勧めします。

カルボプラチン=商品名パラプラチン/カルボプラチン/カルボメルク アリムタ=一般名ペメトレキセド アバスチン=一般名ベバシズマブ

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