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中葉切除術後の痛みへの対処は?

回答者・坪井正博
横浜市立大学附属市民総合医療センター 呼吸器センター外科・化学療法部准教授
発行:2014年1月
更新:2014年4月

  

2週間前に75歳の父が肺がんの中葉切除術を受けました。リンパ節切除もしましたが転移はなく、ステージⅠaでした。術後の調子も良好でしたが、退院後は右肺周りが痛むといい、毎日床についていて心配です。

(52歳 女性 宮城県)

鎮痛薬で対処し 運動で筋力をつける

横浜市立大学附属市民総合医療センター 呼吸器センター外科・化学療法部准教授の坪井正博さん

術後の痛みの原因は、肋骨と肋骨の間を走る「肋間神経」に与えられた刺激によるものがほとんどです。胸の中よりは外側、とくにアンダーバストあたりから前胸部の痛み、不快感を訴えらる方が多いです。また、手術の内容にもよりますが、術中に肋骨骨折などが起きた場合には、骨折に伴う痛みが生じることがあります。強い痛みの多くは、術後2~3カ月で治まりますが、残念ながら完全に痛みが消えることはありません。寒い時期に痛みが戻るなど、ほとんどの患者さんで痛みは何かしら継続します。ただ術後半年~1年も経つと、多くの人は肋間神経の痛みを伴う生活への理解が進み、だんだんと慣れてきますし、ほとんど感じなくなる人もいます。

術後は「経過は大丈夫なのか」「痛みが治らなかったら」という不安が痛みを呼び、痛みを通常より感じやすくなる場合があります。気が紛れているときは痛まないのに、1人で寝ているときなど、病気に気持ちが集中すると強く痛むケースなどです。

対策としては、痛み止めを服用します。通常は、まずNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンやボルタレンなど)を使います。あまり効かない場合は、トラムセットという薬を1日4回ほど、6時間以上空けて服用します。場合によっては、リリカという末梢神経障害による症状を緩和する薬を併用してもよいでしょう。これは1日2回の服用です。

このほか、前述のように、不安が強いために痛みを強く感じてしまう人には、抗不安薬を処方することもあります。

痛みへのもう1つの対策は、運動です。筋肉は動かさないと硬くなり、これを膠縮といいますが、この状態では痛みがより強く感じられます。術後は体をどんどん動かし、胸郭の動きをよくすると痛みの緩和の助けになります。具体的には、まず腕を振って歩くことで十分です。それができたら、ラジオ体操程度で全身を軽く動かしましょう。

高齢の患者さんが常時寝ている生活になると、筋力の衰えも早く膠縮が現れて、いざ動こうと思ったら足腰が弱っていたということになりかねません。ご家族はぜひ、患者さんに声をかけ、部屋では上体を起こして会話をする時間を長くしたり、散歩を勧めるなど、体を動かすよう誘ってください。痛がる姿に接するのはつらいでしょうが、患者さんを動かしてあげることが家族のできる大切なサポートですので、ぜひ励ましながらかかわっていただきたいです。

ロキソニン=一般名ロキソプロフェン ボルタレン=一般名ジクロフェナク トラムセット配合錠=一般名トラマドール/アセトアミンノフェン配合薬 リリカ=一般名ブレガバリン

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