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がんが心臓に食い込んでいる状態。抗がん薬治療がベストか

回答者・久保田 馨
日本医科大学付属病院がん診療センター長
発行:2015年2月
更新:2015年12月

  

母(55歳)が右肺原発性肺がんと診断、がんの大きさが直径10㎝で、心臓に食い込んでおり、手術・放射線治療はできず、抗がん薬治療しか方法はないと言われています。抗がん薬治療が最善の治療法なのでしょうか。他に良い治療法などがあれば教えて下さい。また、薬物治療になった場合に起こり得る副作用とその対策もご教示いただきたいです。

正直、現在の病院の対応に不安を感じており、できれば他の病院で治療をしたいと思っております。ただ、どこの病院がいいのか全く分かりません。病院選択をする際の考え方についても伺いたいです。なお、PET検査の結果、脳を含めて転移はなく、本人も今の所目立った自覚症状はありません。

(26歳 男性 新潟県)

遠隔転移がなければ化学放射線療法ができる可能性も

日本医科大学付属病院がん診療
センター長の久保田 馨さん

手術や放射線治療はできないとのことですが、まず手術に関して、もし腫瘍が心臓の膜だけに触れているような状態なら手術は可能かもしれません。しかし、心臓の組織まで食い込んでいた場合、手術は難しくなります。この判断は難しい場合があります。経験豊富な胸部外科医にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。腫瘍の遺伝子変異についても調べてもらいましょう。放射線治療に関しては、胸膜播種や胸水がある場合は、難しくなります。しかし、心臓に食い込んでいるという理由のみで放射線治療ができないことはありません。実際、心臓に出来る肉腫という稀ながんに対しても放射線治療を考慮します。

播種や胸水がない場合は、化学放射線療法の対象になるかもしれません。その場合使う薬剤には、シスプラチン+TS-1、シスプラチン+タキソテール、シスプラチン+ナベルビンなどがあります。放射線照射は、通常1日1回2Gy(グレイ)を週5回、合計30回で60Gyです。

化学療法の副作用ですが、吐き気や食欲不振、好中球減少に伴う発熱といった感染症を引き起こす可能性があります。その他、便秘や下痢などもあげられます。吐き気に関しては、現在抗がん薬治療の際には吐き気止めの薬を予め使うことが標準的です。そういった対策をきちんと行っている施設を選ぶと良いでしょう。感染症については、予防が大切です。口の中をキレイに保つ口腔ケアを怠らないことが重要です。

下痢がひどい場合は病院に連絡してください。下痢による脱水状態で抗がん薬を続けると重篤になることもあるので注意が必要です。また、様々な副作用が重なってしまうと重い病状になりやすいです。用いる抗がん薬によって現れやすい副作用は異なりますので、担当医や薬剤師に副作用対策も含めてよく話を聞くことが大切です。

病院選択の際の考え方ですが、がん診療連携拠点病院であれば、病院内に医療連携室などがあると思いますので、相談なさると良いでしょう。

セカンドオピニオンを受ける場合、担当医にご相談ください。紹介元の病院へも診療報酬が支払われますので、気兼ねせずに依頼してください。また、治療の目的を明確にすることも大切です。残念ながら、根治が期待できないのであれば、病院も自宅から通いやすい所のほうが良いでしょう。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム タキソテール=一般名ドセタキセル ナベルビン=一般名ビノレルビン

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