EGFR遺伝子変異陽性の場合、免疫チェックポイント阻害薬は有効でないのか
EGFR遺伝子変異陽性の場合には、*タルセバ等の次の薬(2次治療薬)として、*タグリッソが検討されており、免疫チェックポイント阻害薬はあまり有効ではないということを聞いたことがあります。なぜ、EGFR遺伝子変異陽性の患者には免疫チェックポイント阻害薬が有効でないのか、あるいはこの情報は誤りなのかを知りたいです。
(男性 埼玉県)
A EGFR遺伝子変異患者では、効果は限定的
センター長の久保田 馨さん
おっしゃる通り、扁平上皮がん以外の非小細胞肺がん患者を対象とした、*タキソテールと免疫チェックポイント阻害薬との臨床比較試験の結果を見ると、EGFR遺伝子変異陽性の場合には、免疫チェックポイント阻害薬の有効性はあまり高くありません。無増悪生存期間(PFS)はタキソテールのほうが良好な傾向を示しています。非喫煙者や75歳以上の人でも同様の傾向が見られます。免疫チェックポイント阻害薬の効果があるEGFR遺伝子変異陽性患者は少ないのです。
免疫チェックポイント阻害薬が効果を発揮するには、免疫担当細胞が、がん細胞を異物と認識することがまず必要です。EGFR遺伝子変異陰性の場合は、様々な遺伝子変異が重なってがんが発症していると考えられ、体の免疫担当細胞が異物と認識しやすく、免疫チェックポイント阻害薬の効果が発揮しやすいと考えられています。一方、EGFR遺伝子変異陽性の場合は、EGFR遺伝子変異が発症の大きな要因になっていて、他の遺伝子変異が少ないことが、免疫チェックポイント阻害薬の効果が出にくい理由と考えられています。
現時点では、EGFR遺伝子変異陽性の場合、免疫チェックポイント阻害薬ではなく、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)や細胞障害性抗がん薬が優先されます。
*タルセバ=一般名エルロチニブ *タグリッソ=一般名オシメルチニブ *タキソテール=一般名ドセタキセル