早期がん、手術と放射線治療どちらがよいか
夫(50歳)の右肺の上葉に早期の肺がんが見つかりました。がんの大きさは2.5センチで、画像診断では、リンパ節への転移はないようです。夫はトラック運転手で、力仕事も少なくありません。主治医には手術を勧められていますが、本人はがんを治したいことに加え、仕事も続けたいという希望を持っています。手術を受けると、体への負担が大きいように感じます。聞くところによると、放射線を使った治療はそれほど負担がないようですが、本当でしょうか。ただし、何よりがんを治すことが1番の希望です。このまま手術を受けてよいものでしょうか。
(新潟県 女性 48歳)
A 肺葉切除が標準。手術前後のリハビリも大切
ご主人の肺がんの病期は1A期に該当し、その場合の標準治療は手術で、がんの場所から右肺上葉切除が標準手術になります。
手術のやり方としては、部分切除を含む縮小手術も考えられます。ただし、1A期の肺がんの患者さんに対し、アメリカで行われた肺葉切除と縮小手術を比較した臨床試験では、縮小手術を受けた患者さんにより高率に局所再発が起きたというデータがあります。
また、とくにすりガラス陰影を伴わないようながんであれば、がんが血管やリンパ管の中に入り込んでいる可能性があり、リンパ節も含めてがん細胞を残さず切除するほうが、がんを根治できる可能性は高まります。
右の上葉を切除すると、肺全体の20パーセントほどを失うことになりますが、呼吸機能も20パーセント失うわけではありません。手をよく振って歩く、口をすぼめて腹部に力を入れて呼吸をするなどの「呼吸のリハビリ」をきちんとすれば、呼吸機能の低下は5~10パーセントほどに抑えられます。50歳と年齢も比較的若いため、手術前後のリハビリをしっかり行うことで、早期に仕事に復帰できる可能性もあると思います。
手術をどうしても避けたい場合は、定位放射線治療なども勧められますが、現時点では、がんの根治をめざすことを考えると手術、とくに右肺上葉切除が最も勧められます。