閉塞性肺炎併発の肺がん治療について

回答者・坪井正博
横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター外科・化学療法部准教授
発行:2013年9月
更新:2015年2月

  

母(76歳)が、閉塞性肺炎を併発したⅢA期の扁平上皮がんと診断されました。担当医からは手術をするよう言われましたが、高齢のため手術をさせたくありません。今後の治療法について教えてください。

(岩手県 男性 51歳)

A 手術を考慮。肉体年齢と暦年齢は異なる

非小細胞肺がんⅢA期に対する標準治療は、放射線治療とシスプラチンを中心とする多剤併用化学療法を同時に行うことが一般的には推奨されています。ただ、ⅢA期肺がんといってもさまざまな病状があり、杓子定規に治療方針を決めることが難しいのが現状です。

がんが局所に限局していて手術で取りきれると判断される場合には、手術を含めた集学的治療が行われることもあります。すなわち、ⅢA期の場合、手術で取りきれるのならば、取ってしまったほうがよいことがあります。

質問者のお母様は、担当医から手術を勧められたということは、がんは限局していて手術で完全に取りきることができる可能性があると推察します。

ここでいう閉塞性肺炎は、がんによって気管支が詰まることで発生する肺炎です。繰り返す炎症によって、体は熱を帯び体力が低下します。

質問者がおっしゃる通り、76歳は確かに定義上「高齢」です。最新の「肺癌診療ガイドライン(2013年版)」では、高齢者を75歳以上としています。

ただ、肺がん罹患者の実臨床のなかで70歳以上の方が半数以上を占める状況を考えると、肺がん患者さんのなかで76歳は決して高齢者というわけではありません。

また、暦年齢と肉体年齢とは異なります。お母様は閉塞性肺炎を併発して熱があるため、体調が悪いだけかもしれません。その原因を取り除くことで、その後の生活を取り戻せた患者さんも多くいらっしゃいます。

一般の方は、例えば「放射線より手術の方が大変」というイメージがあるかもしれません。しかし、放射線のほうが大変なこともあります。

というのも、短期的にみた場合、手術はつらいかもしれませんが、時間の経過とともに良くなります。放射線治療は、照射とともにじわじわと肺に炎症が起こる放射線肺臓炎が進行し、1年後には呼吸器機能が悪くなることがあります。

長い目で見た場合、患者さんにとってメリットとは何かを考える必要があります。もちろん、この患者さんのような場合にはがんを取りきれるということが条件となります。

ですから、体調が悪い原因が何なのか、手術による多少の負担といったリスクがあってもそれを乗り越えるだけの心肺機能があるのか、手術で取りきるメリットがあるのか、といったことを担当医とご相談してみてください。

高齢だけを理由に、手術という治療の選択肢を排除することはないと考えます。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

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