EGFR陽性の肺腺がん 治療薬は?

回答者・坪井正博
横浜市立大学附属市民総合医療センター 呼吸器センター外科・化学療法部准教授
発行:2014年1月
更新:2014年4月

  

肺腺がんと診断され、脳に微小な転移があるため、抗がん薬治療を受けることになりました。遺伝子検査でEGFR陽性とわかり、イレッサまたはタルセバによる治療を行うと説明されました。どちらがよいのでしょうか。

(75歳 女性 埼玉県)

脳転移への治療根拠はないので 副作用を考慮して選択を

横浜市立大学附属市民総合医療センター 呼吸器センター外科・化学療法部准教授の坪井正博さん

脳転移の症状がない場合は、まずはイレッサかタルセバによる抗がん薬で全身治療を行います。これにより、脳転移が小さくなる場合もありますが、効果がみられない場合は、放射線治療を検討します。もし脳転移による症状があれば、抗がん薬と並行して放射線治療を行い脳転移に対処してもよいでしょう。

イレッサかタルセバのどちらを使うかについては、いまのところその優劣を決するエビデンス(科学的根拠)はありません。タルセバについては、脳転移やがん性髄膜炎への治療効果がみられたという報告があったり、イレッサ投与中に出てきた脳転移にタルセバを使用して縮小、消失が認められた報告があったり、髄液への移行がイレッサに勝るのではないかというデータが示されたりしています。

一方、タルセバだけでなくイレッサの服用により脳転移が縮小、消失した患者さんも実際おられます。現段階では「脳転移がある患者さんには、イレッサよりタルセバを服用するべき」とは言いきれない状況です。2剤の選択では、副作用の面も含めて主治医の先生とご相談、検討されることをお勧めします。

副作用は、一般的にイレッサよりもタルセバのほうが強いです。とくに、皮疹や下痢は、日常生活に影響を及ぼすので、まずは副作用の軽いイレッサを選ぶ方法もあります。タルセバよりイレッサで肝機能障害の起こる頻度は高いとされているので、肝機能に問題がある人には、タルセバをお勧めします。

EGFR=上皮成長因子受容体遺伝子変異 イレッサ=一般名ゲフィチニブ タルセバ=一般名エルロチニブ

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