腺がんのⅠA期 区域切除の対象となるか

回答者・坪井正博
国立がん研究センター東病院呼吸器外科長
発行:2014年12月
更新:2015年3月

  

先日、腺がんのⅠA期と診断されました。がんの大きさは2㎝で、右肺の下葉にあります。主治医からはがんのある下葉を切除する「肺葉切除」を行う旨言われていますが、色々調べてみると、がんのある区域だけを切除して、より切除範囲を狭くする手術も行われているようです。できれば体に負担の少ない治療法を選びたいです。どういう人がこの区域切除の対象となるのでしょうか。肺葉切除と比べてデメリットはあるのでしょうか。

(51歳 男性 長野県)

すりガラス主体の腫瘍(陰影)なら 区域切除も選択肢の1つ

国立がん研究センター東病院の
坪井正博さん

この方の場合、現時点での標準術式は、右下葉切除とリンパ節郭清になります。ただし、これまでの研究の積み重ねから、がんの大きさが2㎝以下で、すりガラス影が半分以上ある症例では、区域切除でも肺葉切除と予後が変わらないのではと考えられていて、現在臨床試験が行われています。2019年にはその結果が出てくる予定です。

区域切除のような縮小手術を行うと、肺葉切除と比べて局所再発が多いという結果から、標準術式として肺葉切除が行われています。ただし、すりガラス影が多いタイプのがんに限れば、区域切除を行ったとしても局所再発率や生存期間は肺葉切除と変わらないのではないかと考えられています。しかし、現時点ではエビデンス(科学的根拠)はなく、最終的には先述した臨床試験の結果を待たなければなりません。

身体的負担という点では、区域切除は肺葉切除と比べて肺を切除する範囲が少ないので、呼吸機能が悪い人には手術直後のメリットが大きいだろうとされています。しかし、手術前の呼吸機能が普通で、体力的に問題ない人であれば、リハビリ次第ですが術後6カ月~1年もすると肺葉切除と区域切除とでは呼吸機能的に大きな違いはありません。痛みや入院期間も変わりません。

区域切除の場合、術後の合併症として晩期肺瘻といって、手術して数週間経ってから肺から空気が漏れてしまうことがあります。頻度はそれほど多くはありませんが、肺葉切除と比べると多いです。また、肺葉切除に比べると区域切除のほうが、手術後に血痰が続く場合があります。

以上のように、区域切除のメリットとしては、残る肺の量が多いこと。デメリットとしては、局所再発に関して現時点ではエビデンスはなく、その可能性を否定できないこと。また、晩期肺瘻や血痰が続く可能性があることがあげられます。メリット、デメリットをきちんと理解した上で、区域切除を受けたいということであれば、お受けになられても良いかと思います。

すりガラス影=高分解能の胸部薄切CT画像で見た際、がんが曇ったすりガラスのようにぼやけて見える状態のこと

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