再発で胸膜播種。治療法はないか
父(80歳)が、扁平上皮がんのⅠ(I)A期と診断され、一昨年(2013年)7月に左下葉摘出、リンパ節郭清をしました(術後治療はせず)。その後、昨年8月に再発(右肺に固形がん3㎝ほどと、胸膜播種)し、Ⅳ(IV)期となり、大学病院で余命6カ月と宣告されました。病院からは「積極的治療はできない。(従来の殺細胞性)抗がん薬治療、分子標的薬治療、放射線治療もできない。むしろ死期を早める」と言われ、緩和治療を考える時期と説明されました。他に治療法はないのでしょうか。例えば抗がん薬の量を少なくして治療する方法や、温熱療法、免疫細胞療法を併用する治療法などないのでしょうか。また、今後症状が進んだ場合、どのような状態になるのか、家族としては知りたいです。
(49歳 女性 長野県)
A 抗がん薬治療ができる可能性もある
センター長の久保田 馨さん
まずは本当に再発かどうかを確認することが大切です。もしかすると新たにできたがんで、組織型も扁平上皮がんではなく、違ったタイプのがんである可能性もあります。お父様は80歳とご高齢ですが、お元気であるならば、もう1度組織を採取して調べてみるのも1つの手です。改めて組織を調べた結果、実は腺がんで、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子があるということになれば、効果が認められている分子標的薬を使える可能性が出てきます。
扁平上皮がんの再発だった場合は、昨年8月からどのような治療をお受けになっていたかによって今後の方針は変わってきます。ご高齢の方では、*タキソテール単独がよく用いられます。その他、*ジェムザール、*アブラキサンなどを単独で用いる方法があります。温熱療法、免疫細胞療法の有効性は示されていません。
「積極的治療はできない」と告げられた理由は何でしょうか? これまで様々な化学療法を受けてきて、食欲が無いとか、体力が低下しているようであれば、担当の先生が言われる通り、積極的治療が余命に悪影響を与えることが多いのです。お父様の心と体に向き合ってみましょう。人生の残された時間の中で、お父様が本当に大切にお考えになっていることは何でしょうか?そのようなお話ができれば、ご家族のケアもより充実したものになると思います。
今後、病状が進んだ場合、衰弱が強くなり、痛みや呼吸困難などの症状が出てくることが考えられます。衰弱は自然の経過です。「もっと食事を食べて」というご家族の言葉が患者にとって1番つらいものになることを覚えておいてください。痛みなどの自覚症状を早い時期から緩和することがとても大切です。お父様は肺の機能があまりよろしくないことが推察されます。こうした場合、もし肺炎などが起きてしまうと、一気に病状が進んでしまう可能性もありますので、注意が必要です。歯のブラッシング(歯磨き)を中心とした口腔ケアをしっかり行ってください。
*タキソテール=一般名ドセタキセル *ジェムザール=一般名ゲムシタビン *アブラキサン=一般名パクリタキセル(アルブミン懸濁型)