分子標的薬を使うのが心配。糖尿病への影響は

回答者・久保田 馨
日本医科大学付属病院がん診療センター長
発行:2015年9月
更新:2015年12月

  

血たんがあり、受診したところ肺腺がんで、骨転移があることも判明しました。EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異があり、分子標的薬が使えると言われましたが、かなり強い薬と聞いています。高血圧症で、糖尿病(境界型)もあるのですが、影響はないのでしょうか。できれば仕事も続けたいので、この選択が正しいのかどうか教えてください。

(68歳 男性 千葉県)

分子標的薬での治療は正しい選択

日本医科大学付属病院がん診療
センター長の久保田 馨さん

EGFR遺伝子変異がある場合は、分子標的薬を使った治療が強く勧められます。正しい選択だと思います。

分子標的薬の副作用ですが、これまでの(細胞障害性)抗がん薬で問題となる白血球の減少やこれに伴う発熱や感染症、貧血、脱毛などはほとんど認めません。吐き気や倦怠感なども、抗がん薬よりも軽いことが多いのです。糖尿病の方の場合は、治療中のしびれや感染症にかかりやすいことが抗がん薬治療中の問題です。これらは分子標的薬ではあまり問題とはなりません。高血圧症も問題にはなりません。

その一方で、皮疹や爪周囲炎などの皮膚障害や下痢が発現する頻度は高く、まれに間質性肺炎も現れます。

皮膚障害については治療を始める前から保湿剤を全身に塗っておくなどのスキンケアを行うとある程度予防できますし、下痢については早期から薬で対応していきます。それでも症状が重い場合は薬の量を減らして対処します。治療中は口内炎や感染症を防ぐために、口腔ケアも怠らないようにし、発熱や空咳、息切れなどの症状が出た場合は直ちに担当医に相談してください。

骨転移に対しては、破骨細胞の働きを抑え、骨折や骨痛などの骨関連事象を減らすゾメタやランマークが有用です。

ゾメタ=一般名ゾレドロン酸 ランマーク=一般名デノスマブ

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