主治医から提案された選択肢以外に方法はないのか

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2020年1月
更新:2020年1月

  

70代の父のことでご相談があります。2019年6月に右肺から採取した細胞検査で肺腺がんステージⅣの診断を受ける(骨転移あり)。7月末よりジオトリフ(一般名アファチニブマレイン酸塩)の経口投与開始。

右肺の腫瘍は縮小、左肺の腫瘍は変化なし。8月末に間質性肺炎で入院。ジオトリフ中断。

9月末の検査でがん腫瘍の膨大と小脳への転移ありと診断。

10月中旬よりアリムタ(一般名ペメトレキセドナトリウム水和物)+シスプラチンの1クール目投与開始。

11月上旬に小脳へ放射線治療(ピンポイント照射)。

現在、アリムタ+シスプラチンの1クール目を終了、左肺の腫瘍はかなり縮小し、効果が認められました。

ただ、右肺の腫瘍は投与前から横ばいです。(ジオトリフは右肺、アリムタは左肺に効果が出たようです。左右で異なるがん腫なのか主治医もはっきりしません)

放射線は成功し、経過については12月にMRIを控えています。

今週2クール目の治療を控えていますが、再び間質性肺炎の疑い(レントゲン右肺部分に擦りガラス状の影、一時的に黒い血痰が出た)があり、主治医から以下の提案を受けています。

①このまま2クール目の治療を行う
②アブラキサン(一般名パクリタキセル:アルブミン懸濁型)の投与に切り替える
③抗がん薬治療を止めて、緩和治療に切り替える

併せて①、②ともに間質性肺炎を引き起こし死亡するリスクが伴うことと、2クール目の治療時期を遅らすことは治療効果を望めないためお勧めしないとのこと、との説明を受けました。

そこでご相談ですが、この①~③の他に治療の選択肢はないのでしょうか。

間質性肺炎は何度引き起こしても対応が早ければ助かるものでしょうか(2回目は確実に死にますと言われましたが、今回どうにか乗り越えました)

2クール目の投与時期を遅らせることは無意味な治療となるのでしょうか?

どの選択をすべきか、怖くて決断力が鈍っています。

(42歳 女性 東京都)

条件次第で①~③以外に選択肢はある

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

この患者さんは、ジオトリフを服用されているので、EGFR(上皮成長因子受容体)陽性なのでしょう。

EGFRでは、エクソン19と21がよくある変異なのですが、それ以外のマイナーな変異というものがあります。どちらの変異なのかは大切な情報です。

間質性肺炎の疑いがある、と書かれていますが、間質性肺炎の診断は難しいので、この診断もとても重要です。

①~③以外の選択肢に関するご質問ですが、EGFRエクソン19または21陽性であれば、タグリッソ(一般名オシメルチニブメシル酸塩)が選択肢になると思います。

タグリッソも間質性肺炎の副作用がありますので、その適応は慎重にしなくてはなりません。間質性肺炎の経過は、その原因によって異なります。

タグリッソでは、間質性肺炎を起こした後に再度タグリッソを投与された患者さんのうち2割が再度、間質性肺炎を起こしたとの報告はありますが、死亡した患者さんはいなかったようです。

「2クール目の投与期間を遅らせることは無意味な治療となる」わけではありません。副作用の回復を待つことは大切です。

また、骨に転移があるような場合は、ランマーク(一般名デノスマブ)またはゾメタ(一般名ゾレドロン酸水和物)の使用が強く勧められます。

担当医は①~③の中でどの選択肢をお勧めになっていますか? その理由を含めてご説明をお聞きになると良いでしょう。間質性肺炎の診断は難しいので、場合によってはセカンドオピニオンを受けられたらどうでしょうか。

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