分子標的薬治療と陽子線治療の併用のエビデンスは?
非小細胞肺がんステージⅣで1次治療として分子標的薬タグリッソ(一般名オシメルチニブ)の服用を続けていて骨転移3カ所はPETの画像上は消えており、原発部分も大幅に縮小しています。今後、原発部分の完全縮小を目指し、陽子線治療を検討していますが、肺炎等の副作用が心配なことと、服薬治療との相乗効果が得られるのか心配しています。分子標的薬治療と陽子線治療との併用療法とのエビデンス(科学的根拠)はあるのでしょうか。
(67歳 男性 福島県)
A 陽子線治療を受ける場合はタグリッソを休止してから
日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
オリゴメタスタシス(少数個転移)といって転移の数(5個以内)が少なければ、ステージⅣでも転移部位と原発の治療を行って根治(こんち)を目指せるのではなかろうか、という考え方があります。
実際にⅣ期であっても、転移が1~2カ所の場合、とくに転移の箇所が副腎や脳であれば、5年以上長期生存の例もあります。
ただ、この患者さんの場合、骨転移が3カ所もあるとのこと、根治を目指して原発巣の治療を行うことに意味があるか明確な答えはないと思います。
PET検査の画像では、骨転移3カ所の画像は消えているとのお話ですが、これはあくまで画像上での話であって、本当に腫瘍が消えているかどうかは経過をみなければわかりません。
放射線との併用についてですが、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)を服用して間質性肺炎が起きなかった患者さんでは併用は可能のようです。タグリッソと放射線との併用に関するデータはなく、安全性に問題がある可能性があります。
もし陽子線治療を受ける場合は、タグリッソを休止して行うほうがよいと思います。