肺がん術後、胸水にがん細胞。様子見と言われているが

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2020年6月
更新:2020年6月

  

空咳(からせき)がよく出るようになり、2017年7月に病院を受診しました。検査の結果、肺がんの疑いがあると言われ、生検をしましたが、がん細胞は見つからず、「たぶんステージ(病期)1でしょう」とのことで、手術をした結果、「非小細胞肺がんで、遺伝子変異はない」と言われました。

抗がん薬治療を始めようとした矢先、脳に転移していることがわかり、定位放射線治療を受けました。

その後、シスプラチン(商品名ブリプラチン/ランダ)とアリムタ(一般名ペメトレキセドナトリウム水和物)の抗がん薬治療を4クール行って、抗がん薬治療は終わり、その後は定期検査を受けていました。

2018年4月に主治医が代わって、「維持療法を何故していないのか」と言われ、アリムタ+アバスチン(一般名ベバシズマブ)の維持療法を行うことになりました。

それ以来ずっと維持療法を続けていましたが、今年(2020年)の1月に胸水が溜まり、入院して胸水を抜いてもらうと、胸水の中から、がん細胞が見つかりました。

今は、がんがどこに転移しているかわからないので、様子をみているところです。

「がんの塊が見つかってから治療を始める」と言われています。そのまま、様子を見ていていいのでしょうか。不安が募(つの)るばかりです。

(68歳 男性 栃木県)

体力があるうちに免疫チェックポイント阻害薬治療の検討を

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

胸水から、がん細胞が見つかったということは、胸膜に転移があるということになります。

現在の主治医は、「抗がん薬の効果を測れるほどのがんの転移がないので、現時点で薬剤を用いて治療を行っても、その有効性が評価できない。だから、様子をみて評価ができる時点で治療を開始しよう」と、お考えかと思います。

この方針の問題点は、このまま様子を見ているうちに、徐々にがんが大きくなって体力が低下してしまうことです。体力が低下してしまうと、がんの薬物療法は効果が期待できなくなります。

現時点での治療の選択肢には、免疫チェックポイント阻害薬があります。腫瘍組織のPD-L1(細胞の表面に発現しているタンパク質)を調べて、免疫チェックポイント阻害薬による治療をご検討ください。

そのことを主治医に申し出るか、あるいは、セカンドオピニオンを受けられたらいかがでしょうか。その場合は、免疫チェックポイント阻害薬を使用することになります。

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