現在、タグリッソを服用しているが今後の展開は

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2020年7月
更新:2020年7月

  

2018年11月に健康診断(X線)にて左肺スリガラス陰影ありと指摘。その後、2回にわたりCT検査を実施したが、異常なしで経過観察となった。2019年6月に左鎖骨リンパ節に違和感があり針生検を行ったところ、肺腺がんを確認。PET検査の結果、左下葉肺がん、多発リンパ節転移の疑いで、ⅢB期の疑いありと診断されました。その後、がんセンターで再度、検査を受けた結果、非小細胞肺がん(腺がん)で、左下下葉の心臓近くが原発巣で、縦隔(じゅうかく)、右肺門、小脳(極小の転移らしきもの)に転移を確認。

遺伝子変異、PD-L1検査を行い、EGFR遺伝子変異、2%のがん細胞が陽性。2019年8月よりタグリッソ単剤80㎎の投与を開始。

当初2週間おきの通院から、現在8週間おきに通院して、脳MRI。頸部から骨盤部までのCT、心電図、血液検査を実施しています。小脳については、薬投与後、すぐに消失。

4月時点で、原発巣24.1㎜(2019/7)が8.5㎜に縮小、右肺門18.7㎜、縦隔・鎖骨リンパ節はCR(完全奏功)、PS(パフォーマンス・ステイタス)は現在、0です。

そこでご相談ですが、3月初めと4月末の検査で、原発巣の大きさは若干小さくなったものの、右肺門の大きさは若干大きくなっているのかという状態から、薬の耐性を大変気にしています。

臨床試験(JCOG104/WJOG8214L)では、タグリッソ単剤とプリプラチン、アリムタを途中挿入するランダム比較試験が行われていますが、これら抗がん薬との併用や、また、手術や放射線との併用を含めて良い治療法はないのでしょうか。

またEGFR変異に対して、免疫チェックポイント阻害薬や、遺伝子パネル検査による新たな治療法は有効なのでしょうか。

今後の治療展開についてお教えいただければ幸いです。

(55歳 女性 三重県)

今後の展開ではABCP療法の選択肢が

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

EGFR陽性患者に対する標準治療は、この患者さんのようにタグリッソ(一般名オシメルチニブメシル酸塩)などのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。

化学療法とタグリッソとの併用については未だ有効か否かの結果は出ていませんので、現時点では、タグリッソ継続が適切だと思います。

今後の展開ですが、小脳の腫瘍が増大した場合はガンマナイフの治療、その他の部位が増大した場合は免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の併用療法が考えられます。EGFR陽性の場合は、パラプラチン(同カルボプラチン)+タキソール(同パクリタキセル)に、アバスチン(同ベバシズマブ)、免疫チェックポイント阻害薬のテセントリク(同アテゾリズマブ)を併用するABCP療法の選択肢があります。

EGFR遺伝子変異陽性の場合は、遺伝子検査パネルで新たな治療法が見つかる可能性は低いと思います。

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