腺扁平上皮がん&EGFR陽性は稀と言われたが

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2021年4月
更新:2021年4月

  

私は非喫煙者ですが、2020年2月に右肺と縦隔リンパと脳への転移が見つかり、ステージⅣと診断されました。右副腎にも転移があり3月から第3世代EGFR-TKIの治療が始まりましたが、肝機能障害が出たため4週間の休薬の後、現在減薬して治療中です。私の場合、原発の右肺の生検が難しく、縦隔リンパ節へ気管鏡検査を行い、扁平上皮がんPD-L1 95%となりました。

主治医は腺扁平上皮がんと判明した以上、遺伝子変異検査は不要と言われましたが、脳に転移もあったため、念のため遺伝子変異検査を希望して追加で実施してもらったところ、EGFR遺伝子変異検査陽性(L858R、T790M)が同時に判明し、治療を開始しました。

私のような腺扁平上皮がん&遺伝子変異(EGFR阻害剤の治療開始前にT790M変異を認める)の組み合わせは稀だと主治医に言われました。私のようなケースがどのくらいあり、どのような治療が実施されているか知りたいです。

(48歳 女性 東京都)

タグリッソでの治療が効果的

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

扁平上皮がんの患者さんのほぼ全員に喫煙歴があります。典型的な扁平上皮がんではEGFR陽性であってもEGFR-TKIの効果は不良で、主治医が言われたように遺伝子検査は不要だと思います。

しかし、非喫煙者の場合は、扁平上皮がんと診断されても遺伝子検査は必要です。腺扁平上皮がんの場合も同様に必要になります。ご質問は腺扁平上皮がん&遺伝子変異(EGFR阻害薬の治療開始前にT790M変異を認める)の頻度と治療法です。

腺扁平上皮がんの頻度は、肺がん全体の1%程度です。腺扁平上皮がんでEGFR陽性の割合は30%程度との報告があります。治療開始前にT790M変異を認める患者はEGFR陽性例の約1%です。まとめますと、ご相談者の様な方の頻度は、肺がん患者さん全体の0.03%程度と考えられます。かなり稀ですね。

T790Mに変異があるとイレッサ(一般名ゲフィチニブ)やジオトリフ(同アファチニブマレイン)は治療効果が低く、第3世代の治療薬タグリッソ(同オシメルチニブメシル)が勧められます。脳に転移があった場合は、ガンマナイフによる治療も検討されます。

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