肺腺がんステージⅣだが、QOLを下げずに日常生活を送れるか

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2021年4月
更新:2021年4月

  

71歳の父のことでご相談です。左肺上葉の肺腺がん(非小細胞肺がん)ステージⅣです。脳には転移はありませんが、背骨、骨盤、大腿部に転移があります。EGFR陽性、ALK陰性、ROS1陰性、PD-L1陽性です。EGFR、PD-L1の両方が陽性の場合はEGFRの治療薬を使うほうが有効とのことで、第3世代のEGFR-TKI内服による治療を行なうことになっています。

遺伝子検査の結果、exon(エクソン)21、exon20に該当。exon21には効果的だがexon20には効きにくいという報告があるため、効果がどう出るか不明とのこと。

初回は副作用が出る可能性もあるため2週間程度、入院予定になっています。家族としては何とか寛解することを願っていますが、今後QOL(生活の質)を下げずに日々充実した暮らしが送れることを望んでいますが、可能でしょうか。

(40歳 女性 埼玉県)

QOLを下げずに日常生活を送ることは充分可能です

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

この患者さんはEGFR陽性でexon21に変異がありますので、exon20変異があっても、まずはタグリッソ(一般名オシメルチニブメシル)での治療を開始されるのが良いと思います。

また骨転移がありますので、歯科を受診し毎日の口腔ケアを十分行い、ゾメタ(同ゾレドロン酸)かランマーク(同デノスマブ)の投与を受けることをお勧めします。

もし、骨転移の部位に痛みが出た場合は放射線治療を考慮します。

根治は難しいと思いますが、寛解は十分可能です。そもそもこの治療の目的は患者さんのQOLを下げずに、元気に日常生活を送れる時間を出来るだけ長くすることなのです。

タグリッソは飲み薬なので病状が安定すれば月に1度か、2カ月に1度、通院すれば良く、患者さんにも楽だと思います。副作用については、稀に間質性肺炎や吐き気、皮膚障害などが出ることもありますが、多くは対処可能です。

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