間質性肺炎の病歴あるが、がん再発の治療法は

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2022年1月
更新:2022年1月

  

2017年8月、左肺下葉に約2㎝の肺腺がんが見つかり、ステージIAとの術前診断でした。同年10月に左肺下葉の切除とリンパ節郭清手術を受けました。術後1カ月に胸膜播種を伴うとのことでステージIV、ALK融合遺伝子変異陽性との確定診断が下されました。

2018年1月から分子標的薬アレセンサを服用し始めましたが、5月頃から息苦しさが増してきて、KL-6の値が647と基準値を超えたため、副作用である間質性肺炎の疑いがありアレセンサは服用休止となりました。その後、KL-6の値も基準値内になりました。

2021年10月で手術から4年が経過しましたが、11月初旬に撮影したCT画像で、今度は右肺に数カ所の異変が見つかりました。全て2㎜の大きさですが、肺がんの再発が疑われるとのことで、PET-CTやMRIで詳しく調べる予定になっています。

肺がんの再発だとしたら、間質性肺炎の病歴があり治療法の選択が難しいと思いますが、どのような治療法が考えられるでしょうか。

(59歳 男性 神奈川県)

選択肢はまだ十分にある

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

現在、ALK融合遺伝子を標的にしたALK阻害薬は5種類あります。

2012年に承認されたザーゴリ(一般名クリゾチニブ)が第1世代。ご相談者が使用されたアレセンサ(同アレクチニブ)は、2014年に承認された第2世代です。同じく第2世代のALK阻害薬としてジカディア(同セリチニブ)があります。副作用として間質性肺炎が発症する確率はアレセンサで5.3%、ジカディアで0.6%です。

ご相談者の場合、肺がんに対してはアレセンサの効果は認められていたと思いますので、間質性肺炎の頻度が低い第2世代のジカディアの使用を検討されてはいかがでしょうか。

第2世代のALK阻害薬で効果がなくなったら、2018年に承認された第3世代のローブレナ(同ロルラチニブ)が考えられます。ローブレナの間質性肺疾患の発症頻度は0.9%と報告されています。

それでも効果がないようなら、シスプラチン(一般名)+アリムタ(同ペメトレキセド)の併用療法、あるいは免疫チェックポイント阻害薬を含んだABCP療法[テセントリク(一般名アテゾリズマブ)+カルボプラチン(一般名)+タキソール(同パクリタキセル)+アバスチン(同べバシズマブ)]も選択肢に挙げられます。このようにまだまだ選択肢は十分にありますので、担当医とよく相談なさってください。

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