完治は無理か
2020年6月、肺の左上葉部に非小細胞がんが見つかり、切除手術を受けました。切除後にリンパ節転移があることがわかりました。再発予防のため化学療法を受けましたが、2021年5月にMRI、PET-CT検査の結果、頸椎、腰椎、左大腿骨への転移が見つかり、6月からはタグリッソの服用を始めました。
主治医から「完治は無理で、がんと共存しながら生活していきましょう」と言われています。やはり完治することは無理なのでしょうか。
(55歳 男性 東京都)
A 5年以降のデータがまだない
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
分子標的薬タグリッソ(一般名オシメルチニブ)を使用されていますので、ご相談者の肺がんはEGFR変異陽性ということになります。
EGFR陽性の非小細胞がんに対しては、2002年に承認されたイレッサ(同ゲフィチニブ)が、細胞障害性抗がん薬に比較して腫瘍が縮小する方々の割合が高く、効果の持続時間も長いことが示されました。しかし、イレッサでは2年以上効果が持続する方は極めて少なかったのです。
ご相談者が服用中のタグリッソは、第3世代の薬剤です。EGFR陽性の非小細胞肺がんを対象に、イレッサなど第1世代の薬剤との比較試験が行われました。
病気の増悪までの期間や生存期間は、タグリッソのほうが明らかに良好でした。治療開始から2年後に悪化していない患者の割合は30~40%くらいで、第1世代より明らかに良好でした。この試験結果を基に、タグリッソは2018年8月21日にEGFR変異陽性非小細胞肺がんの治療薬として、1次治療から使用可能とする適応拡大が承認されました。
タグリッソは発売されて2021年で5年が過ぎたところなので、5年以降の長期のデータはありません。したがって完治の可能性については今のところ明解な答えはないと考えます。最悪の事態に備えると共に、最善の希望を持って日々をお過ごし頂ければと思います。