肺がんが再々発したら、どんな治療がよいか
5年前、右肺の下葉に非小細胞肺がんが見つかりました。病期は2B期とのことで手術を受け、リンパ節も切除しました。術後に再発予防の治療はしませんでした。手術をしてから1年後に、左肺に数個のがんが見つかりました。担当医から使用可能な抗がん剤のリストを見せてもらい、パラプラチン(一般名カルボプラチン)とタキソテール(一般名ドセタキセル)の併用療法を選んで受けました。治療後、良好な経過をたどっていますが、再々発の不安もあります。再々発の治療について、お聞かせください。
(秋田県 女性 59歳)
A 一般的には単剤治療。体力があれば2剤併用も
再々発は専門的には再増悪といいます。その時の体力次第ですが、再々発に対する治療法はあります。元気な方なら2種類の抗がん剤を併用することもありますが、一般的には1剤を用います。
ご相談者は、ファーストラインの治療で、パラプラチンとタキソテールを用いていますから、お元気なら、再々発の治療としてパラプラチン、あるいはシスプラチン(一般名)と、タキソテール以外の抗がん剤の2剤による併用療法を考えてよいかもしれません。
1剤の単剤療法なら、科学的データに基づけば葉酸代謝拮抗剤のアリムタ(一般名ペメトレキセド)、もしくは分子標的治療薬のタルセバ(一般名エルロチニブ)を選択することが多いと思います。この2つの薬には副作用などに違いがあります。アリムタは、基本的には細胞毒の薬ですので、骨髄抑制*、薬剤性の間質性肺炎*などの副作用はありますが、その程度は比較的軽いと言えるでしょう。タルセバは、骨髄抑制などの副作用はありませんが、湿疹など皮膚症状が40~50パーセント、下痢も40パーセントほどの人に出ます。ただし、重症化する人は多くありません。
アリムタ単剤、タルセバ単剤以外にも、データは少ないですが、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)、タキソール(一般名パクリタキセル)などによる単剤療法が使われることもあります。ちなみに、再燃時(セカンドライン治療)の患者さんを対象にTS-1単剤とタキソール単剤を比較した臨床試験が近々始まる予定です。抗がん剤治療にはそれぞれ一長一短がありますので、治療法は担当医とよく話し合って決めてください。
*骨髄抑制=がん治療で抗がん剤、放射線などにより、一定期間、骨髄の造血能が障害される状態
*間質性肺炎=肺炎が、肺胞や細胞壁(間質)に起こる。非常に致命的であると同時に治療も難しい