遺伝子変異がある肺がん。分子標的薬をどう選ぶか
最近、肺がんの疑いで、細胞と組織を採取する生検を受けました。その結果、非小細胞肺がんで病期は4期と言われました。EGFR(上皮成長因子受容体)の遺伝子変異も調べたところ、遺伝子変異があるとのことで、分子標的薬を使う予定です。イレッサ(一般名ゲフィチニブ)、もしくはタルセバになるようですが、どちらを選んだらよいのでしょうか。
(島根県 女性 47歳)
A 最初に用いるならイレッサが妥当
EGFR遺伝子変異のある患者さんを対象とした日本の2つの臨床試験を見ると、イレッサ単剤は、これまで使われていたパラプラチンとタキソール、あるいはシスプラチンとタキソテールの2剤併用に比べて、試験登録から腫瘍が大きくなるまでの無増悪生存期間を有意に延長することがわかっています。しかし、生存期間全体の延長については、十分に示されていません。
ご相談者のような場合、最初の治療としては、イレッサ単剤か、従来の抗がん剤2剤併用のどちらかを選択するというのが一般的な考え方になっています。おそらく、主治医は毒性の面から、従来の2剤併用療法よりも、骨髄抑制の少ないイレッサやタルセバの治療のほうがよいと考えて推奨されたのだと思います。
次に、イレッサがよいのか、タルセバがよいのかについては、非小細胞肺がんの再増悪症例(セカンドライン)の患者さんを対象にした臨床試験が行われていますが、現時点では結論が得られていません。
イレッサとタルセバは同系統の薬なので、どちらを選んだらよいかは、2つの薬のエビデンスレベルと毒性の違いが参考になるかと思います。EGFR遺伝子変異のある人に対して最初にイレッサを用いた場合、腫瘍の縮小効果は70パーセントと言われていますが、日本でタルセバを用いた初回治療の成績は公表されていません。また、毒性については、イレッサよりもタルセバのほうが強いと言われています。エビデンスレベルと毒性のことを考えると、現時点では、最初にイレッサを用いるのが妥当でしょう。