間質性肺炎を合併。効果的な化学療法や分子標的薬は?

回答者:坪井 正博
神奈川県立がんセンター 呼吸器外科
発行:2008年8月
更新:2013年11月

  

最近、CT、PETによる検査を受けた結果、左下肺野に3センチ大の非小細胞がんの扁平上皮がんが発見されました。対側縦隔のリンパ節にも腫瘍があるとのことです。間質性肺炎も合併しています。今後は、化学療法を中心にした治療を受ける予定です。効果的な化学療法や分子標的薬を教えてください。また、化学療法後に、放射線治療や手術を受けることはできますか。実は、3年前に、PSA(前立腺特異抗原)値が高くなり、生検で前立腺がんが見つかり、ホルモン療法中です。前立腺がんのホルモン療法は、肺がん治療に影響を与えることはないでしょうか。

(岩手県 男性 69歳)

A 3B期なら、抗がん剤治療後に放射線治療だけを追加

対側縦隔にリンパ節転移があるとのことですから、肺がんの3B期と推定されます。ただし、病期の正確な診断には、対側縦隔リンパ節転移が本当にあることを確認する必要があります。扁平上皮がんの場合、炎症に伴う腫れもあります。PETなどの画像診断上は、腫れがあっても、実際には転移はなかったということもあるのです。PETなどの画像だけでがんあるいはがんの転移ありと診断できるのは全体の80パーセントほどです。20パーセントは、画像上では対側縦隔リンパ節転移があっても、実際にはリンパ節転移はなく、病期が2期や1B期の場合もあります。

3B期なら放射線と化学療法の併用となります。通常、放射線と抗がん剤を同時に行いますが、間質性肺炎をお持ちなので、同時に行うと放射線に伴う肺炎を引き金に間質性肺炎が急激に悪化して呼吸不全をきたすリスクが高いと予想されます。抗がん剤治療後に放射線治療だけを追加されるのがよいでしょう。

また、間質性肺炎を起こしにくい抗がん剤を選ぶことも大切です。ナベルビン(一般名ビノレルビン)、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)などは、比較的間質性肺炎を起こしにくいです。逆に、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、タキソテール(一般名ドセタキセル)、トポテシンまたはカンプト(一般名イリノテカン)などは、間質性肺炎を起こしやすいため、好ましくないかも知れません。

分子標的薬は、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)、タルセバ(一般名エルロチニブ)などがありますが、間質性肺炎をお持ちであればこれらの薬による薬剤性肺障害、間質性肺炎が発症するリスクが高くお勧めできません。細胞の検査のときに、その細胞組織の遺伝子変異検査で、遺伝子変異が確認されるようなら、有効かも知れません。効きやすいタイプなら奏効率50~60パーセント。効きにくい人は奏効率10パーセントほど。ただし、扁平上皮がんでは変異が観察されることは極めて少ないです。ほかに治療法がない場合には、チャレンジしてみるのもよいかも知れません。

もし、3B期でなくて、2期や1B期なら手術をするほうがよいかも知れません。また、抗がん剤や放射線を使ったあと、腫瘍を小さくしてから手術をするチャンスがあるかもしれません。

ただし、手術をしたから治るわけではありません。2期でも再発リスクは30~40パーセントはあります。手術後に厳重な経過観察が必要です。

前立腺がんのホルモン療法についてですが、肺がん治療への影響はありません。前立腺がんと肺がんはまったく別個のがんです。それぞれのがんの治療を続けていくことが大切です。

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