4年3カ月で2つの原発がんを経験。全身にあるのか不安

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2008年3月
更新:2015年2月

  

2006年7月に、肺の右上葉に2センチの腺がんが見つかり、手術を受けました。病期は1Bで、術後の抗がん剤治療は受けていません。03年8月にも、左乳房の乳がんの手術をしており、大きさは3センチ弱で、リンパ節転移はなく、術後は放射線治療を受けました。肺がんは、乳がんの再発ではなく、原発と言われました。07年1月の検査で、右肺に6ミリの影と右下葉に小さい影がいくつか見つかりました。6月の検査でも同じ場所に、同じ影がありました。医師からは「1センチほどの大きさにならないと判断はできません。今後も、CT検査で変化を見ていきましょう」と言われました。お聞きしたいのは以下の4つです。(1)手術直後に抗がん剤治療を受けたほうがよかったのでしょうか。(2)6ミリの影が1センチになるまで、CT検査を繰り返して、待つだけなのでしょうか。(3)この4年3カ月で、2つの原発がんを経験しました。血液検査でマーカー値は上がっていませんが、全身にがんがあるのではないかと不安です。(4)今の状態で、UFT治療は効果があるでしょうか。

(秋田県 女性 51歳)

A 3つ目を早期に見つけるには、地道に検診を

そもそも、術後に発見された影はがんではない可能性が高いと思います。がんの育ち具合はさまざまですが、普通は半年も経てばそれなりに育って大きくなります。術後半年で見つかった影がさらに半年経っても変化がないのであれば、がんである可能性は低いでしょう。肺は手術に絡んでいろいろなダメージを受けますので、そのための変化を見ている可能性が高いと思います。念のためにさらに半年後にCTを撮って、変化がないことを確認していけばよいでしょう。

1B期の腺がんについては、UFT(一般名テガフール・ウラシル)を2年間服用することが本邦での標準と考えられています。しかし、それによって皆さんが治るようになるのではなく、数字を丸めますと、100人のうち75人はUFTを飲んでも飲まなくても5年間生きられ、10人はUFTを飲んだおかげで5年間生きられ、残る15人はUFTを飲んでも5年間生きられない、という成績が示されています。

この3つのグループのいずれにあなたが当てはまるのか、今はわかりません。手術直後に抗がん剤治療を受けたほうがよかったかどうかもわからないのです。また、術後補助化学療法の実績は、術後2カ月程度までに始めるようにした臨床試験で示されています。術後1年以上経て化学療法を行った場合のデータは世の中に存在しません。しかし、今、CTで見えている影ががんでなければ、術直後と同じ状態ですから、その効果のほどは前述したものとあまり変わらないと考えてよいでしょう。

(3)のご不安はもっともなことです。2つの原発がんを経験した方は、体質や、環境などのがんになりやすい背景が、1つだけの方、全くがんを患ったことがない方に比べれば濃厚だったものと考えられ、3つ目もできやすいと考える必要があります。しかし、がんを患っても腫瘍マーカーが高くならない方もいらっしゃれば、がんではないのに高くなる方もいらっしゃり、腫瘍マーカーだけでは、がんの診断は不確実です。

3つ目を早期に見つけるには、地道に検診を受けるしか手はありません。検診を受けているから100パーセント安心ともいえませんが、「生」自体が不安定で見通しがきかないものですから、生きている限り、ある程度の不安はやむをえないともいえるでしょう。不安な気持ちを乗り切るために、精神科医の助けを借りたほうがよい時もあるかも知れません。

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