副作用がひどく、イレッサを中止。今後の治療法は?
2003年7月、55歳の夫の右肺上葉に直径1センチの腫瘍(腺がん)が見つかり、右肺の上葉を切除し、リンパ節を郭清。手術後にはパラプラチン+タキソールの抗がん剤治療を4クール受けました。しかし、去年の6月に右肺に再発。転移はないものの、胸水が僅かにありました。腫瘍マーカーのCEAの数値は16.0で、腫瘍の大きさは直径2センチ弱でした。TS-1の内服薬を2カ月服用しても効果はありません。イレッサに切り替え、4カ月近く服用したところ、今年1月の検査でCEAが3.7まで下がりました。イレッサは効いていると思うのですが、副作用で湿疹ができました。イレッサを中止して、現在は皮膚科で治療を受けています。イレッサの服用を中止したため、がんが再び拡大するのではないかと不安です。今後の治療はどうしたらよいのですか。
(千葉県 女性 34歳)
A イレッサの服用回数を減らす。抗がん剤の治療の選択も
CEAが下がっていることなどを考えると、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)はおそらく効いていたのでしょう。しかし、イレッサはがん細胞を全滅させる薬ではありませんから、がんは残っています。治療を中止すれば、いずれまた増えてきます。
今後の治療法としては、まずイレッサを再び服用するのが良いと思います。副作用は心配ですが、しばらく中断したあとに再開すると、副作用が軽くなることもあります。もし同じように副作用が出たとしても、飲む回数を減らすことで対処できるかもしれません。
イレッサは1日1錠服用しますが、これを1日おき、2日おき、と副作用があまり問題にならなくなるまで間隔を開けてみるのです。
規定の量より少なく服用するため、効果が落ちる可能性もありますが、副作用を抑えつつそれなりに効果が維持できるかもしれません。私の経験では、イレッサによる肝機能障害との兼ね合いで、2週間に1錠まで減らし、それでも2年ほどイレッサが効いていた患者さんがおられました。
それでも副作用がひどかったり、減量すると効果が維持できなかったりする場合には、従来の抗がん剤である「細胞毒の抗がん剤」に変える方法もあります。
細胞毒の抗がん剤は、イレッサなどの分子標的薬と違って、正常な細胞も傷害しやすいのですが、長い実績があります。肺がん治療の抗がん剤では、すでに使われたパラプラチン(一般名カルボプラチン)+タキソール(一般名パクリタキセル)が、腺がんを含む非小細胞肺がんに対して最も強力とされる組み合わせの1つです。このような第1撃を切り抜けてきたがん細胞を相手にする今の状況で、第2撃として最も実績が示されている抗がん剤はタキソテール(一般名ドセタキセル)で、単剤で使います。この場合、副作用は軽く済むことが多いのですが、その反面明らかな効果が出る率は1割ほどにすぎません。
タキソテールによる治療もうまくいかなかった場合、第3撃に関するデータはあまりなく、治療法は確立されていません。国内で非小細胞肺がんに対して使える抗がん剤としては、シスプラチン(商品名ブリプラチンもしくはランダ)のプラチナ系の抗がん剤と、タキソールやタキソテール、ナベルビン(一般名ビノレルビン)、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、イリノテカン(商品名トポテシンもしくはカンプト)といった第3世代の抗がん剤、飲み薬であるTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)などがあります。これらを単独、あるいは組み合わせて使うことで、計算上は30種類を超える治療のしかたがありえます。
では、これらの治療法のどれがよいかというと、データがないのでわからないのです。主治医が使い慣れている、ご主人がこれまで使っていない、実際に使ってみて副作用が極端に厳しくない、といったことを基準に選んでいくことになるでしょう。ただ、第1撃のパラプラチン+タキソールも、第2撃のタキソテールも乗り越えてきたがん細胞を相手にするわけで、効果が得られる可能性はあまりありません。副作用だけがきつく現れ、損をする可能性も覚悟する必要があります。
その他には、今年の秋頃に、新しい分子標的薬であるタルセバ(一般名エルロチニブ)が承認されるのではないかという話があります。タルセバの標的はイレッサと同じですから、イレッサでうまくいかない場合に役立つかどうかはなんとも言えないところはありますが、攻め方が異なっていますので、効くかもしれません。ただし、イレッサと同様に、間質性肺炎のような重い副作用が起こり、最悪の場合はそれがもとで亡くなる可能性もあることは覚悟なさる必要があります。
服用回数を減らしてイレッサを飲み、それがうまくいかなければ、その他の抗がん剤を受ける。その間にタルセバが承認されれば、その治療を考慮するという順番でお考えになってはいかがでしょうか。