扁平上皮がんがリンパ節に転移。残された治療法は?

回答者:坪井 正博
東京医科大学病院 呼吸器外科講師
発行:2007年6月
更新:2013年11月

  

2年半前、左肺にステージ3の約5センチ大の扁平上皮がんが見つかりました。気管の近くにあり摘出手術が不可能で、放射線治療と化学療法の併用をすることになりました。治療開始2カ月後、腫瘍は肉眼で発見できない大きさになりました。同じ場所にがんが見つかり、リンパ節への転移もありました。完治する保証が100パーセントないのなら入院はしたくありません。代替医療を含め、どんな治療法が残されていますか?

(北海道 男性 52歳)

A タキソテールが標準。代替療法はまだ科学的データはない

ご相談者の場合、同じ場所にがんができた(再発)ということであれば、放射線治療はその周りの正常組織が放射線により破壊される可能性が高く難しいです。転移したリンパ節が気道を狭めてしまったり、血痰の原因になったりすることがあります。最初に放射線治療を行った場所と違う別のリンパ節が腫れてきた場合にはこれらの症状緩和のために放射線治療がオプションとなることがあります。しかし、再発ですので、原則は抗がん剤治療を行います。今の日本の医療事情ではタキソテールが標準的な薬の選択だと思います。

私の患者さんで同じような場合に、タキソール(一般名パクリタキセル)とパラプラチン(一般名カルボプラチン)の2剤併用療法が奏効したこともあります。体力もあり、治療をする前向きな気持ちがあるのなら、2剤併用療法は強力な候補です。

多少、副作用が強くなることを了解できるなら、この2剤併用にチャレンジされてもいいし、副作用により日常生活がつらくなることを危惧されるのなら、単剤で治療されるのもいいと思います。また、代替医療を考えておられるようですが、体力が許せば標準的な治療のほうがいいと思います。

正直言って代替医療のことは詳しくわかりません。実際の医療のなかで食欲が少し落ちている人や、手指、足趾にしびれの出てきた人に漢方薬を勧めたりすることがあります。副作用の観点から抗がん剤の種類とうまくかみ合えば、毒性が軽減されることが知られています。しかし、漢方でがんを死滅させることはきわめて難しいのが現状です。臨床試験で代替医療をやったら寿命が延びてよかったという科学的なデータは何もありません。いずれにしても主治医とよく話し合われたうえで、取り入れればいいと考えます。

代替医療がうまくいっている人たちの大部分はいわゆる「自己免疫をいかに上げたか」について述べています。

しかし、ヒトのがんの免疫メカニズムそのものが十分にはわかっていません。免疫療法は、まだまだ試験治療の段階だと思います。実験ではうまくいっても、人体への応用には壁があるようです。ご相談者の場合も、免疫療法あるいは代替医療がそういうレベルのものだとわかったうえで、チャレンジするかご判断ください。

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