肺腺がんリンパ節転移。血管にも浸潤、手術はできないか

回答者:吉田 純司
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科医長
発行:2005年5月
更新:2013年11月

  

大きさ5センチの肺腺がんと診断されました。がんはリンパ節にも広がっていましたが、ほかの臓器へは転移していませんでした。ブリプラチン(一般名シスプラチン)+ナベルビン(一般名ビノレルビン)の化学療法の後に手術を行う予定でしたが、化学療法を始めてしばらくしてから血管への浸潤が判明したため、手術は難しいと言われました。できれば手術を希望しています。もしできないのであれば、今受けている化学療法を続けるのが1番良いのでしょうか。

(福島県 男性 58歳)

A 手術できる可能性はあるが、成功しても治癒は難しい

手術を希望されていますが、化学療法中にがんが血管に浸潤してきているため、2つの問題点があります。

1つは、どの血管に浸潤しているかです。例えば大動脈や大静脈など、心臓に近く、太い血管に浸潤している場合は、手術でがんを切除してもあまり役立たないのです。このような場合は手術自体も難しくリスクが高い上に、手術が成功しても、治癒にはなかなか結びつかないのが現状です。

あるいは、心臓と肺を結ぶ血管へ浸潤していることも考えられます。肺は、右肺は上葉、中葉、下葉の3つ、左肺は上葉、下葉の2つの肺葉に分かれています。手術では、一般的にがんを含んだ肺葉をすべて切除します。しかし、肺葉に至る血管が枝分かれするところにがんが浸潤していると、複数の肺葉を切除する必要があり、切除することによって失われる肺の機能が多すぎて手術ができない可能性が出てきます。

もう1つ、もっと重大なことは、この方のがんは抗がん剤治療を始めてから血管へ浸潤したのですから、これまでの抗がん剤が効いておらずにがんが進行してしまっているという点です。このような場合、一般的には手術をしても治癒は難しいことが多いのです。

ですから、手術はできなくはないかもしれませんが、リスクは高く、手術が成功したとしても、治癒する率は非常に低いし、QOL(生活の質)が悪くなることもありえます。例えば、一生、酸素吸入器を手放せなくなることもあります。こうした現実をお知りになった上で、手術を受けるかどうか、今1度検討されることをお勧めします。

仮に手術を選択されなかった場合、化学療法だけで肺がんを全滅させることは難しく、化学療法単独での5年生存率はゼロに近い状況です。

ではどうするのがよいかというと、化学療法に放射線治療を加えることが考えられます。この場合の5年生存率は、1割ほどを期待できます。ただし、喫煙者は放射線のダメージを受けやすく、放射線肺臓炎(放射線による間質性肺炎で、致死率が高い)を起こす割合も非喫煙者に比べ高まります。放射線化学療法を受ける場合、詳細については主治医によくご相談下さい。

化学療法で使う抗がん剤は、おそらく変えられたほうがよいでしょう。候補としてはタキソテール(一般名ドセタキセル)などが考えられます。

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