退院後の経過は順調。経過観察ですべきことは?
非小細胞肺がんの腺がんで、左下葉切除の手術を受けました。病期は1期で、胸の中のリンパ節への転移はなく、肝臓、脳などへの転移もないとのことです。2週間ほどの入院で、退院後の経過は順調です。私の場合、どのような経過観察がよいのでしょうか。胸部X線検査や、CT、MRIなどは、どんな間隔で受けたらよいのでしょうか。また腫瘍マーカーは数多いといわれていますが、どんな腫瘍マーカーをチェックしたらよいのでしょうか。
(宮城県 女性 50歳)
A 症状が出るまでは通常のサイクルの検査を
ほとんどありません。いろいろ検査を行うほど、早く転移・再発を見つけることはできます。たとえば、CTは普通のレントゲン写真よりも小さな変化を発見できます。しかし、CTで見つかる変化の多くは手術に伴う肺の炎症や傷跡で、それを確かめるには、増えたり、大きくなったりしないことをある程度の時間をかけて経過を見る必要があります。
また、早く再発を見つけて早く治療を始めるほうがより長い寿命につながるわけではありません。肺がんが再発した場合、多くの患者さんはがんが全身化しています。血液やリンパ液に運ばれて、脳などの離れた場所に転移していることが多いのです。
このような場合、治療の主力は抗がん剤ですが、その治療は始めるのが多少早くても遅くても、結果に大差はありません。また、検査で見つかった再発が1カ所だけだったとしても、検査では見えないがん細胞が隠れていることが多く、再発を手術や放射線で治療しても、また次々に再発がんが出てきてしまい、初めの治療が無駄であったことも多いのです。
手術後にどの検査をどのような間隔で受けたらよいのか、科学的なデータはがんの早期発見・早期治療といいますが、再発がんについては事情が違うのです。そのため、検査はあまり頻繁、詳細にしなくてもよいと私は考えており、通常、術後の経過観察は、半年に1度ほどのペースで、胸部レントゲン検査と血液検査、診察を行うだけにしています。検査を繰り返して、「出てこないだろうか」と気に病み続けるよりも、症状が出るまでは大丈夫と考えて、あまり検査をがっちりと行わないほうが、精神衛生上もよいのではないかと思っています。
腫瘍マーカーについては、手術前に上昇していて手術後に下がったものをチェックしていくことには意味があります。再度上がってくるようですと再発が疑われるからです。ただし、腫瘍マーカーはがんでなくとも上昇することがあって、再上昇しても再発ではなかったという場合も少なくありません。腫瘍マーカーの数字にあまり一喜一憂しないことです。