緩和医療だけより、抗がん剤治療の方が延命効果あり
父が非小細胞肺がんの4期と診断されました。すでに転移があるので、手術も放射線も抗がん剤もあまり期待できないため、ホスピスを勧められています。父は元気で、外出も可能です。本当にホスピス以外に方法がないのでしょうか?
(埼玉県 男性 45歳)
A やりたいこと、のぞまれる状況、を大切にすることが第一
米国には、症状がないか、症状の軽い全身状態のよい人に、シスプラチン(ランダなど)を含んだ複数の薬剤による化学療法を行なった場合と、緩和医療だけを行なった場合とを比較した臨床試験があります。生存期間の中央値では、化学療法を受けた方が2~3カ月の延命効果があり、1年生存率を約10パーセント高められるという結果が出ています。
もちろん、お父様がやりたいこと、のぞまれる状況を大切にすることが第一ですが、肝・腎機能が良い状態なら、抗がん剤治療を考慮されてもよいのではないでしょうか。いろいろな薬の組み合わせのなかでも、シスプラチンとゲムシタビン(ジェムザール)を併用した場合の効果がやや高いという結果が出ています。ただし、これは入院での治療になりますので、お父様が拘束の少ない通院での治療を望まれる場合には、カルボプラチン(パラプラチン)とパクリタキセル(タキソール)を併用する抗がん剤治療もあります。それでも、白血球・血小板減少、過敏症や末梢神経障害などの副作用に注意が必要ですし、病院側に通院の患者さんの副作用にきちんと対処できる体制が整っていることが重要です。
また、ホスピス・緩和ケア病棟に否定的な印象を持たれる方が多いのですが、その内容は本当にさまざまです。最期の数週間しか看ないところや、1度入ると出られないところ、本当になんにもしないところ、モルヒネで痛みを抑えてさえいればよいとばかりに肺炎を起こしても抗生物質を出さないところなども残念ながら少なくありません。
しかし、たとえば都立豊島病院の緩和ケア病棟では、1度入院しても4割から5割の方が在宅に戻られて生活なさっています。とにかく複数の施設について、各科の連携はうまくいっているか、どこまで治療を行う方針なのかを電話などで確認したり評判を聞いたりして条件に合う施設を探し、早いうちに外来を受診することが大切です。この方の場合、肺がんを専門とする肺内科、または腫瘍内科と緩和医療の専門家のいる施設がベストだと思います。