脳に転移性腫瘍。全脳照射に不安を感じている
半年ほど前に、77歳の父が非小細胞肺がんの腺がんと診断。病期は4期です。手術はできず、抗がん剤治療を続けてきました。最近、検査で脳に転移性腫瘍が見つかりました。腫瘍は1個で、大きさは1センチほど。全脳照射を予定していますが、脳全体を照射することに不安を感じます。全脳照射のほかによい治療法はないのでしょうか。
(愛媛県 女性 48歳)
A 腫瘍局所制御率の高いガンマナイフを勧める
転移性脳腫瘍に関する治療適応は、厚生労働省の班会議でもまさに大規模比較臨床試験が行われている最中です。転移性脳腫瘍が1つ見つかれば、その他脳内に多数ある可能性は高く、いわば“氷山の一角”という扱いで全脳照射を最初から勧める病院も少なくありません。しかし、全身状態が良く、生命および機能予後の良い患者さんがこの治療を最初に受けてしまうと、数年後に白質変性を併発し、認知症に陥る可能性が少なからずあります。放射線科医によれば、新たな転移性脳腫瘍の発生が低くなるという見解もあるようで、脳転移が見つかってから平均生存期間10カ月と言われる状況では、全脳照射は間違った選択肢ではないと思います。
相談者のお父様のような状況なら、ガンマナイフを勧めます。腫瘍局所制御率は非常に高く、治療に費やす時間が短く、転移性脳腫瘍には最適です。全脳照射では、脱毛、皮膚炎、骨髄機能障害による貧血や感染症、全身倦怠感などの合併症がしばしば問題となりますが、ガンマナイフはまったく認めません。唯一、放射線障害に伴う脳浮腫が10パーセントの患者さんにリスクとして挙げられますが、1センチほどの小さなものなら可能性は非常に低いと思われます。ガンマナイフは外科手術と同じ局所治療なので、他部に再発する可能性はありますが、3カ月間隔を空ければ何度でも治療可能なので、その都度必要な箇所に、必要な数だけ治療ができます。全脳照射は基本的に1回のみの治療です。われわれはガンマナイフでコントロールできなくなった患者さんに対して“最後の切り札”として取っておいています。