脳転移の疑いがあり。治療法は全脳照射しかない?

回答者:成田 善孝
国立がん研究センター中央病院 脳神経外科
発行:2007年11月
更新:2013年11月

  

2年前、非小細胞肺がん4期と診断されました。手術はできない状態とのことで、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)による治療を受けてきました。最初はその効果が現れました。ところが、最近、MRI検査で脳に影があり、転移の疑いがあると言われました。担当医から全脳照射を勧められていますが、副作用が心配です。治療法は、全脳照射しかないのでしょうか。

(岩手県 女性 71歳)

A 全脳照射以外にもガンマナイフなどの定位照射がある

脳転移の治療方針は、

(1) 脳転移の腫瘍の大きさ

(2) 脳転移の場所

(3) 脳転移の個数

によって決まります。

脳転移が単発でも複数でも、脳全体に放射線を照射する全脳照射が標準的な治療法です。

一般的に、脳転移が1カ所で、腫瘍が3センチ以上の大きなものは、麻痺や失語などの神経症状が進行していることが多く、外科手術をしてから全脳照射をするのが有効で、標準的な治療法となっています。手術により神経症状が回復することがほとんどで、手術により症状が悪化する可能性が高い場合には放射線治療がメインになります。

また、腫瘍が3センチ未満と小さくて、脳転移の個数が3~4個の場合には、全脳照射ではなく、ガンマナイフや、サイバーナイフなどの定位照射が行われることもしばしばあります。

全脳照射で物覚えや記憶が悪くなったりすることも時に見られますが、脳転移が見つかった時点で他の場所にも転移している可能性があり、全脳照射はMRIで写らない小さな転移にも有効です。

ガンマナイフなどの定位照射では、照射した部分以外の再発率が高くなります。ガンマナイフと全脳照射による治療を比較したさまざまな臨床試験が行われていますが、これまでのところ、生存率などの治療成績や記憶などに対する影響は、両者の治療に差が認められていません。

全脳照射でも定位照射でも、放射線治療後は、2~3カ月に1回のペースで、MRIまたはCT検査が必要です。これらの検査で、再発が見られた場合には、適切な対応が求められます。

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