術後に再発。抗がん剤治療は続けるべきか

回答者:坪井 正博
神奈川県立がんセンター 呼吸器外科医長
発行:2011年11月
更新:2014年1月

  

肺腺がんで右下葉切除の手術を受けました。リンパ節転移はなく、病期は1A期でした。術後はUFTを服用しながら経過観察していましたが、2年4カ月後、鎖骨に悪性腫瘍ありとの所見が出ました。それ以外の臓器や腫瘍マーカーには異常がありません。現在、病理検査中で、それが肺からの転移だったら、放射線と抗がん剤の治療を行うといわれています(UFTの服用は主治医の判断で中止)。私の場合、抗がん剤治療をまだ続けなければいけないのでしょうか。助言をお願いします。

(神奈川県 女性 46歳)

A 進行肺がんと同様に、抗がん剤治療を

ご相談者は抗がん剤治療に対して不信感をお持ちになったのかも知れませんが、鎖骨にはっきりと病変が現れているわけですから、体力が許せば、間をおかずに治療を受けることを考えられてもよいのではないでしょうか

鎖骨の悪性腫瘍が新たながんでなく、肺がんの転移と仮定してご説明します。その場合、一般的には抗がん剤治療が勧められます。骨転移の場合、痛みを取るために放射線を局所照射して転移した部分を叩くこともよくあります。UFTは再発予防を期待して投与されていたわけですが、治療終了後間もなく転移したとなれば、効果がないと考えて、別の抗がん剤を使うことになります。通常、術後再発、転移した場合は進行(4期)肺がんと同様な視点で抗がん剤が選択されますので、主治医の判断は妥当と考えます。

肺腺がんの術後再発、転移に対する初回の化学療法としては、ブリプラチンを含めた併用療法が標準とされ、ブリプラチン+アリムタ、あるいはカルボプラチン+タキソール+アバスチンの組み合わせが多いです。あるいは遺伝子検査でEGFR遺伝子変異があれば、イレッサを使うこともあります。また、骨転移の場合、がん細胞による骨破壊、それに伴う病的骨折を防ぐため、ゾメタという薬を用いることもあります。ただし、ゾメタはあごの骨が溶けてしまうという重大な副作用が起こることもあるので注意が必要です。

肺がんの骨転移なのか、骨そのものの腫瘍なのかによって、治療内容は変わります。いずれにしても、治療が腫瘍に効果を示しているかどうか、主治医はこまめにチェックします。

抗がん剤は、患者さんによって効かなかったり、効いても途中で耐性ができたり、重い副作用が出て続けられなかったりもします。不安であれば、主治医とコミュニケーションを密に取るようにしましょう。

UFT=一般名テガフール・ウラシル ブリプラチン=一般名シスプラチン アリムタ=一般名ペメトレキセド カルボプラチン=一般名パラプラチン タキソール=一般名パクリタキセル アバスチン=一般名ベバシズマブ
EGFR遺伝子変異=遺伝子変異のため、EGFR(上皮成長因子受容体)ががん細胞表面に過剰発現していること
イレッサ=一般名ゲフィチニブ ゾメタ=一般名ゾレドロン酸 耐性=がん細胞が薬に慣れて効かなくなること

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