肺がん1b期。術後の化学療法の効果は?

回答者:坪井 正博
神奈川県立がんセンター 呼吸器外科医長
発行:2012年2月
更新:2013年12月

  

先日、肺がんの手術を受けたところ、非小細胞がん(腺がん)1b期との診断。腫瘍の大きさは、3.5センチでした。医師より術後補助療法として、抗がん剤治療を受けるように言われています。抗がん剤治療は、副作用がつらいとよく聞きますが、どの程度のものなのでしょうか。また、どの程度、効果があるものなのでしょうか。教えてください。

(東京都 男性 72歳)

A 副作用が温和な飲み薬の抗がん剤で2年間の治療

非小細胞肺がんで術後の病期が1b期の患者さんに対しては、UFTという飲み薬の抗がん剤による治療を2年間行うというのが一般的です。

ただし、非小細胞肺がんには、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの3種の肺がんがありますが、このうち、腺がん以外の非小細胞がんについては、UFTの効果を疑問視する医師もいます。

副作用は、10パーセントの人に食欲不振が生じますが、吐き気までに至る人はまずいません。数パーセントの患者さんに「ごはんがおいしく感じられない」といった味覚障害や嗅覚障害、5パーセント以下の頻度で肝機能障害、口内炎、爪の変色などがみられます。副作用はどれも比較的軽度で、一般に点滴の抗がん剤の副作用としてよく耳にするような強いものではありません。

UFTの大規模臨床試験では、この治療を受けた人のうち1年間服用できた人が70パーセント程度、2年間飲み切った人が55パーセント程度で、長く服用した人のほうが、予後がよかったと報告されています。がんの大きさが2センチより大きい1a期と1b期非小細胞肺がんの5年生存率は77パーセントですが、比較試験を集めた解析結果によると、UFTを服用した人の5年生存率はそれよりも約5パーセント高くなります。

副作用の程度にもよりますが、治療されるのであれば、安易に中止することなく、長くUFT治療を継続したほうが良さそうといえます。

ただし、がんの大きさが4センチ以上の場合や、がん周囲の血管やリンパ管にがん細胞が入り込んだ様子が手術で取り出したがんの中にある場合には、再発リスクがより高いことが知られています。こういったケースでは、海外の臨床試験結果をもとに点滴による抗がん剤治療を勧める医師がいます。

この場合、一般的にはシスプラチンを含む2種類の抗がん剤が使われます。抗がん剤の種類によって副作用はまちまちですが、嘔吐、吐き気、味覚障害、下痢、骨髄抑制、口内炎、脱毛などの症状は、相応に強く現れます。

まずは、「あなたの肺がん」の状態をしっかり把握され、補助療法として使われる可能性がある抗がん剤のリスクと期待される効果とのバランスを十分に理解されることをお勧めします。なぜなら、補助療法を行った全ての人が再発を予防できるわけではありませんし、逆に1b期では補助療法をやらなくても再発しないで「治癒」される方が70パーセント前後いらっしゃるのですから。

最終的には主治医の先生とよく相談されて、抗がん剤治療をするかしないかを検討していただければと思います。

UFT=一般名テガフール・ウラシル シスプラチン=商品名ブリプラチン

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