家族歴は膵がんの罹患リスクを高めるか?定期検査は必要か?

回答者・森実千種
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科
発行:2013年12月
更新:2014年3月

  

父が5年前に膵がんで亡くなりました。このような家族歴があると、膵がんの罹患リスクは通常より高いと思ってよいのでしょうか。

もしリスクが高いのなら、定期的に検査を受けていく方がよいのでしょうか。その場合、どのような検査をどれくらいの頻度で受けていくべきなのでしょうか。

(38歳 男性 静岡県)

第一度近親者に2人以上の膵がん患者がいれば高リスク

国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科の森実千種さん

膵がんの多くは遺伝とは関係なしに起こる偶発的な疾患とされています。ただ、なかには家族内で膵がんが多発するケースのあることがわかっており、これを家族性膵がんと呼びます。

家族性膵がんの研究は、アメリカがとくに進んでおり、「第一度近親者(親子または兄弟姉妹)に2人以上の膵がん患者さんのいる家系」を、家族性膵がんの家系と定義しています。

膵がん患者さんのうち、5~10%が家族性膵がんとされています。

第一度近親者に膵がん患者さんが2人いると、その家族は6・4倍、3人いると、32倍膵がんになりやすい、という報告もあり、家族性膵がん家系の健常者は膵がんの罹患リスクが高いといえます。

ご相談者の場合、現時点で父君だけの罹患ということなので、家族性膵がん家系の定義には当てはまりません。それでも罹患率は、一般の家系の2・5~4・5倍程度上昇する、というデータもあります。今後さらに、膵がんの患者さんが家系に発生した場合は、要注意ということになります。

ただ、膵がんの場合、発症リスクがある程度高いことがわかったとしても、早期発見につながる定期的検査方法が確立していないのが、一番の問題です。体外からの通常の超音波検査や、超音波内視鏡検査、CT、MRIといった検査が膵がんの診断に有用ですが、それぞれ一長一短あります。

通常の超音波検査は、一番負担の少ない検査ですが、膵臓全体をくまなく観察できない場合のあるのが難点です。

超音波内視鏡検査は小さな膵腫瘍を見つけるのにはとても有用な検査ですが、内視鏡による検査なので、頻繁に受けるにはつらい検査となる、といった具合です。

また、これらの検査をどのぐらいの間隔で行っていれば膵がんを早期発見できるのか、についてもわかっておらず、今後の重要な課題です。

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