70歳の母に神経をブロックする療法は可能か
母の膵がんが判明、腹膜播種もあると言われました。母は背中の痛みが強いらしく、医療用麻薬を使っていますが、友人から「神経をブロックする治療をすると、もっと痛みがラクになるのではないか」と言われました。母の痛みをできるだけ取り除いてあげたいのですが、70歳の母にもその方法は可能でしょうか。詳しく教えてください。
(58歳 男性 北海道)
A 腹腔神経叢ブロックが有効なこともある
がん研有明病院
がん疼痛治療科部長の服部政治さん
がん疼痛治療科部長の服部政治さん
腹膜播種を生じた膵がんの患者さんは、上腹部から腹部全体にかけての痛みに加え、背中の痛みも出ることが多くあります。医療用麻薬を投与しても鎮痛効果が得られない場合、「腹腔神経叢ブロック」という治療法が効果的なことがあります。
内臓の神経は、神経叢という神経の集まりを形成し、その集まりと集まりの間を網の目状に神経が配置されています。腹腔神経叢ブロックは、外から針を刺し、その網の目状の内臓の痛みを伝達する神経にアルコールやフェノールなどの神経破壊薬を入れ、痛みを遮断します。
現在、内科医が内視鏡を用いて行う方法と、ペインクリニックの医師による方法の2通りがあります。
腹腔神経叢ブロックが不適応なのは、出血傾向のある人や抗凝固薬を服用している人などで、年齢はこの治療法の可否の条件にはなりません。70歳の方でも問題なく受けていただけます。がんの進行度、播種の広がり度合いなどによって鎮痛効果は異なりますが、この療法を行うと効果が出る、使用している医療用麻薬の量を減量する、もしくは増量せずに済むことができます。
すべての施設で実施しているとは限らないので、ペインクリニックの医師や緩和ケアの医師を通して、実施できる施設を探されるとよいでしょう。