PSMA標的治療について教えてください

回答者●古賀文隆
がん・感染症センター都立駒込病院腎泌尿器外科部長
発行:2021年12月
更新:2021年12月

  

最近、前立腺がんが再発した日本の歌手が、オーストラリアで「PSMA標的治療」を受けて症状が改善したとの記事を読みました。私も前立腺がんで治療中なので、この療法はどんな治療なのでしょうか。また、どれほどの効果があるのか教えてください。

(53歳 男性 東京都)

保険適用されていないが、効果は期待できる

がん・感染症センター都立駒込病院
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん

相談者のご質問は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)抗体に、β(ベータ)線(放射線の1種)を放出するルテチウム177を標識した治療薬(ルテチウム177-PSMA)についてと思われます。同治療薬は、PSMAを発現する前立腺がん細胞に結合して、β線の放出によって治療効果を発揮します。

本邦では保険承認されていませんが、国外では使用可能な地域があり、その一つがオーストラリアです。

2021年に報告された臨床試験では、抗がん薬を含む2種類以上の標準治療を受けた去勢抵抗性(1次ホルモン療法が効かなくなった)前立腺がん症例を、ルテチウム177-PSMA投与群と従来の標準治療群に分けて、がんの進行のリスクを比較しています。

その結果、ルテチウム177-PSMA治療群で、病勢進行のリスクが従来の標準治療群と比較して60%低減したと報告されており、治療効果が確認されています。

まだ保険承認されていないため、本邦では使用することはできませんが、上述の臨床試験の結果から、去勢抵抗性前立腺がんの新たな治療法の一つとして有効性が期待されています。

ルテチウムPSMA療法が第Ⅱ相試験で転移性去勢抵抗性前立腺がんに高い効果 新しいLu-PSMA標的放射線治療の可能性

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