再発時、強度変調放射線治療を追加できるか

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2008年8月
更新:2013年12月

  

2006年9月、頻尿のために、PSA(前立腺特異抗原)検査をしました。75と非常に高く、前立腺がんの疑いが強いため、すぐに経尿道的前立腺切除術を受けました。手術後はホルモン療法剤の抗アンドロゲン薬のカソデックス(一般名ビカルタミド)を服用しました。PSA値は11月末に0.55で、翌年4月下旬に5.32となり、5月から6月の間に、外照射放射線治療を70グレイかけました。2008年1月のPSA値は2.15で、ホルモン療法剤をエストロゲン薬のエストラサイトカプセル(一般名リン酸エストラムスチン)に変更しました。このような治療経過を持つ者が、再発したときに、強度変調放射線治療は可能ですか。今春から健康保険に適用されたとのことで、選択肢の1つとして考えています。

(滋賀県 男性 80歳)

A 前立腺に追加照射することは困難

一般的に、前立腺がんの診断は針生検によって行います。相談者の場合は、頻尿などの排尿障害があり、前立腺がんが強く疑われたため、排尿障害の改善と病理診断を目的に、経尿道的前立腺切除術を行ったのだと思います。経尿道的前立腺切除術で組織を採取して検査したところ、前立腺がんと確定診断されたのでしょう。そこで、ホルモン療法を始めたわけですが、PSA値が2.15と高くなり、放射線治療を行ったと思われます。

外照射放射線治療による前立腺の根治線量は、一般的には70グレイ以上とされています。より多量の放射線を照射するとそれによる障害を起こす可能性があります。

相談者の場合、すでに70グレイの放射線を前立腺に照射していますから、さらに追加照射することは困難です。強度変調放射線治療は、腫瘍に集中的に照射することができ、放射線の副作用を少なくして、その治療効果を高めるように工夫された最先端の放射線治療です。ご指摘のように、強度変調放射線治療は、今春から前立腺がんに健康保険適用され、患者さんの負担が軽減されました。しかし、残念ですが、これを追加で照射することは難しいと思われます。

また、前立腺がんが骨やリンパ節に転移した場合にも、放射線治療を行うことがあります。一般的には外照射放射線治療で、強度変調放射線治療はほとんど行わないと思います。

今後の治療についてですが、エストラサイトに代えたあとのPSA値の経過を見守る必要があります。もし、再びPSA値が上昇したら、ステロイド剤のデカドロン(一般名デキサメタゾン)を用いる治療法があります。このステロイド療法で、コントロールできる可能性があります。

もう1つは、今秋、健康保険に適用される予定の抗がん剤のタキソテール(一般名ドセタキセル)による治療法も選択肢の1つになるかも知れません。ただし、この抗がん剤は骨髄抑制などの副作用があります。腎臓や肝臓、骨髄機能が正常なら選択肢として考えてもよいと思いますが、高齢ですのであまりお勧めできません。

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