シスプラチンをエルプラットに変更するのは有効か

回答者・山口俊晴
がん研有明病院副院長/消化器センター長
発行:2015年6月
更新:2019年7月

  

胃がんが判明し、すでに肝臓に転移しているため手術はできず、化学療法を行うことになりました。TS-1とシスプラチンの併用療法を受けていますが、吐き気がつらく、できれば他の抗がん薬にしたいと考えています。最近、エルプラットという薬も胃がんで使えるようになったそうですが、シスプラチンをエルプラットに変更するのは有効でしょうか。HER2は陰性です。

(66歳 男性 愛知県)

それぞれ副作用があり、どちらも一長一短

がん研有明病院副院長/消化器センター長の山口俊晴さん

胃がんではHER2陽性の場合、ハーセプチンを含む化学療法が標準治療と位置づけられたことから、一次化学療法の前にHER2検査を行うことが推奨されるようになりました。ご相談者の方は遠隔転移があり、HER2陰性とのことですから、TS-1+シスプラチン(SP療法)が最も奏効率の高い治療法になります。

エルプラットは切除不能進行・再発大腸がんの標準治療薬として、日本を含む世界中で使われている薬です。海外では切除不能進行・再発胃がん患者さんに対して、TS-1+エルプラット(SOX療法)が用いられてきました。SP療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)もほぼ同じであることが報告されています。日本でも昨年(2014年)SOX療法が承認され、選択肢の1つとなりました。

ここでポイントとなるのは副作用です。エルプラットはシスプラチンと比較すると消化器毒性は比較的少ないのですが、手足のしびれなどの末梢神経障害はシスプラチンよりも強く現れます。

どちらを選択しても一長一短ですから、中途で切り替えず、吐き気対策を強化して、このままSP療法を続けられたほうがよいと思います。

なお、SP療法とSOX療法では、投与方法にも違いがあります。シスプラチンは腎毒性が強いため、入院して大量の輸液を点滴投与する必要がありますが、エルプラットは外来で3~4時間の点滴投与で治療することが可能です。

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ エルプラット=一般名オキサリプラチン ハーセプチン=一般名トラスツズマブ

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