PEGのメリットとデメリットは?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2008年9月
更新:2019年7月

  

半年ほど前に、胃がんで胃を3分の2ほど切除する手術を受けました。がんは胃の出口の幽門部にできていました。手術後、牛乳が飲めなくなり、食事の量も以前の半分ほどになりました。体力と気力の低下を強く感じています。何とか、前向きに考えて、生活しています。最近、知人からPEGと呼ばれる栄養補給法があると言われました。お腹に胃瘻という第2の口を作り、そこから直接栄養剤を流し込んで体力をつける方法だそうです。体力の回復にはよいとのことです。胃を切除した患者でも作れるとのことで、この栄養補給法を受けるかどうか、迷っています。この栄養補給法のメリット、デメリットについてお聞かせください。

(愛媛県 男性 60歳)

A 口から積極的に食べる努力を

胃を切除すると胃の大きさが小さくなりますから、1度に食べられる食事の量が少なくなります。これを小胃症状といい、とくに残った胃が小さい場合に強く見られる症状です。胃を切除するとこの小胃症状のほかに、さまざまな後遺症が起こることがあります。

胃の出口寄りを切除したり、胃を全部切除した場合には、食べたものの一部が十二指腸や小腸に急に流れ込む結果、ダンピング症状といわれる症状が起こることがあります。とくに牛乳や脂っこい食物などが小腸に急に流れ込むと、腸の動きが促進されて、腹痛や下痢が起きやすくなります。

これらの症状は、個人差や程度に差はありますが、術後の早期にはとくに強く見られるものです。しかし時間がたつとともに、このような環境に腸が適応するようになり、通常は症状が軽減していきます。その良くなり方は個人差があり、手術直後からあまり症状のない方もあれば、術後数年しても症状の強い方もおられます。

多くの場合には術後3~6カ月くらいで、かなり改善するものですが、落ち着くまでに1年位かかる方も珍しくありません。その間は、1回の食事量を少なくして、間食で補ったり、脂っこいものは少なめに取るなどの工夫をすることで過ごす必要があります。

ご相談の方は、まだ手術後6カ月ということですから、今後さらに症状が改善してゆく可能性が十分にあります。食べ方や食事の内容を工夫することで様子を見られるのが賢明だと思います。

お尋ねのPEGとは経皮内視鏡的胃瘻造設術の頭文字をとったものです。口から食事をとれない人のために、お腹に小さな穴を作り、内視鏡を利用した特別な技術で、外から栄養を入れるようにします。メリットは、栄養補給が確実にできることです。ただし、手術ですからそれなりのリスクもあります。とくに、胃がんの切除手術をしたあとのPEGは通常より難しいですから、気軽に受けるものではありません。

前述したように、口から積極的に食べる努力をしてください。ほとんどの方が食事の工夫によって、口から十分な栄養を摂れるようになります。ただし、中には経口摂取が少ないために、体重が激減したり、その結果日常生活に支障をきたすような例もみられますが、そのような場合はPEGを試みるべきでしょう。PEGを行っている専門施設にご相談ください。

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